3人寝ても充分な広さを誇る寝台は、今は2人きりだ。後ろ手で帳帷を締めながら、キャスターは、ベッドの上に乗り上げた。
年若い自分は今日はエルキドゥと夜通し語り合うらしい。余計な手を出すなよ、と釘を刺して部屋を後にしたアーチャーの姿を思い浮かべながら、キャスターはど真ん中で寝こけるルーラにせと目を向けた。
「ん、ぅ」
キャスターの気など知らず、すやすやと気持ちよさげに眠るルーラの頬を撫でる。余計な手を出そうにも、こうも穏やかであどけない寝顔をみせつけられれば、起こす気も失せるというものだ。アーチャーであれば手を出したのであろうが、生憎キャスターは眠る幼童を起こす程、子供ではない。
頬を撫で回していた手を下ろして、首をつぅ、と辿る。普段はアーチャーからの贈り物である首飾りが付けられているが、睡眠時だからか今は無防備に晒されていた。
(耳か、足だな)
白く細い首をゆるゆると撫で回しながら、そんなことを考える。ピアスはアーチャーが怒るであろう。ならば、残った場所は1つしか無かった。
むき出しでベッドにへと投げ出されているふくらはぎにゆっくりと触れる。成長途中の幼子のような、細い足だ。背丈だけは高いくせに、手足も、体も、肉付きが薄い。
そのままするり、と手を下にへと這わせ、キャスターはルーラの足首にそれぞれ1つずつ足飾りを付けた。
(我の……………)
かつて、悪しきものは地面から這ってくるものと信じられていた時代、それらから身を守る魔よけとして足飾りは重宝されていた。
魔除け、と言えば聞こえは良いが、これは自分の元から離れて行かぬように、という足枷だ。どこにも勝手に歩かせない。勝手に離れることなど許さない。もう二度と、喪わぬように。
アーチャーにはキャスターの思惑などバレるであろうが、向こうも大概だ。そもそも、首輪を付けたがっていたアーチャーにとやかく言われる筋合いはない。
寝台に体を預けると、ルーラの体を抱き寄せる。腕の中に確かに感じる温もりを離さぬよう、キャスターはより1層強く抱きしめて、瞼を閉じたのだった。
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