9月は秋を迎え

9月になって、義勇さんは仕事が忙しいと嘆いている。元々9月になったら新しい業務を引き取るとかで(だからこそ8月にまとまった休みが取れたのだろうけど)忙しくなるのはわかってはいたらしいけど、まさかここまでとはと残業や持ち帰りの仕事の狭間で頭を抱えている。仕事が落ち着くまで会うのは控えようか?と提案したけれど、そういうことじゃないと反論されたので、ここ最近は義勇さんの家にお邪魔することが多い。

とはいえ義勇さんは忙しく構ってもらえるわけもなく、寝支度を整えた私はベッドの上でごろごろしながら義勇さんの仕事が終わるのを待つだけだ。正直私いなくてもいいんじゃ?とは思う。だけど少しの時間だけでも義勇さんと一緒にいられるのは嬉しいし、最近は夜になると少し肌寒くて義勇さんにくっついて眠る口実ができるのだ。もっとも、義勇さんには夏の間もくっついていただろうと叱られそうだけど。

「終わらない…」

ふらふらとした足取りで義勇さんがベッドサイドにやってきたのは11時を過ぎた頃で、眉間の辺りを押さえながらそのままベッドにダイブした。

「義勇さん大丈夫?コーヒー入れる?」
「…いや、いい」

義勇さんは私の肩口辺りに顔を埋めて大きなため息をついた。義勇さんの髪が頬にあたってくすぐったい。いつもは私が義勇さんにしがみついて眠るから、私が義勇さんに腕枕しているようなこの体勢はなんだか新鮮に感じてしまう。

「…5分経ったら起こしてくれ」

義勇さんはくぐもった声でそう言うと、すぐに小さな寝息を立て始めた。

「うーん、これは…」

絶対⸜5分じゃ起きないパターンだよなぁ。最低限やらなきゃいけないことは終わってるって言ってたし、声だけかけてゆっくり寝かせてあげよう。

腕の中ですやすやと眠る義勇さんがいつもより可愛く見えて、こういうのもたまには悪くないなぁと思う。とりあえず約束の5分後まで、私はこのままゆっくりと義勇さんの寝顔を堪能させてもらいます。


(210901)