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「そこでポアロの名前が出て、料理も美味しいって評判だって言ってたから、じゃあ次のお休みに行ってみよう!ってなって来てみた訳。」

「それじゃあ、なんで飲み物しか頼まなかったの?料理が美味しいって聞いてたんだよね?」

 少しの隙も見逃さない!とでも言うように間髪入れずに聞いてくる。
 それに苦笑しつつ、落ち着いて対応する。
 
「朝ごはんを食べたはいいんだけど、中々お腹が空かなくてね。それもあって、お店に入ろうかどうしようか悩んでいたんだけど。」

 嘘でもないが、本当でもない。
 大半の理由は、今生きている私の世界に君たちがいるかどうかの確認だった。
 そんなことを馬鹿正直に言えるはずもない。
 私の言い訳に満足したのか、そうでないのか。微妙な表情をした彼の口撃は終わった。

「それじゃあ、今度はお腹が空いたときにでもいらっしゃってください!私のおすすめは、イカ墨パスタです!」

 人差し指を立てて、真剣な表情をする梓さんに苦笑する。
 次に来る予定も、気持ちもないので曖昧に笑って美味しそうですねと返すと、是非食べに来てくださいと言って、彼女は厨房へと戻っていった。

 アイスティーを一口飲みこむと、少しだけ肩の荷が下りたような気がした。
 コナン君に疑われる可能性を考えていなかったわけではなかった。
 ただ、ポアロで出会う事は想定していなかったし(私の想像力不足)、一番気を付けようと思っていたのはポアロにいる安室さんだったから。
 適当に料理を頼んで、適度な時間で外へ出ていけば怪しまれないと思っていたのに、出鼻をくじかれてしまった。
 思えば、気を付けようとしていた筈の安室さんすらいないのである。
 なんだか空回りしているなぁ、と目の前の少年に再び視線を移す。

「コナン君は、一人でここに来たの?」

「うん、そうだよ。」

「へぇ。ここにはよく来るのかな?ほら、子供だけで喫茶店ってなんだか、珍しくて。」

 小学生が一人で喫茶店に入る姿なんて、中々見る光景ではない。
 最低でも、中学生が高校生くらいではないだろうか。
 さらに言えば、社会人の割合が多いはず。
 彼がここに来る理由なんて、分かっているのに先ほどのお返しだと言わんばかりに質問をしてみたのだ。
 
「僕、ここの上に住んでるんだ。だから、よくポアロにも来るんだよ。」

「上って、毛利探偵事務所ってなってるけど。あの、有名な毛利探偵の所の子供なの?」

「ううん。違うよ。お世話になってるだけ。」

 どうやら私への興味は薄れたらしく、目も合わせずオレンジジュースをずずっと吸っている。
 コナン君への質問は知っている事だったので、ふぅんと特別興味もなく相槌をうった。

「そうなんだ。今朝もニュースで、眠りの小五郎がすごいってやってたけど、寝ながら推理してるの?」

「……うーん、そうなんじゃないかなぁ?」

 ……若干、しどろもどろになってる気がするがスルーをしてあげる。

「へぇ。寝ながら推理するなんてすごい人もいるんだねぇ。」
 
 私がクスクス笑っていると、コナン君はハハハと笑った。
 疑いはどうやら晴れたようである。
 それ以上に問いかけてくる訳もなく、一言二言喋るくらいでお互いに飲み物を口にした。

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