「お疲れ様でした、…ってあの?」
「今日は安室さん家に行きます。」
「はい?」
「拒否権はありません。」
そう言って彼女は僕の腕を掴んだまま離しそうにもない。全くこの図々しさはどこからきているのやら。とは言え今日は久しぶりに本来の自宅に帰れるはずだったのだが、これは帰れそうにないな。
「以前も言いましたけど、みのりさんはもう少し男性に対して危機管理を持った方がいいのでは?」
「持ってますよ。ただ安室さんは別なので。」
「僕も男ですけど?」
「部下の家族に手を出していいんですか?」
まさかそこまで、ほんの少し動揺してしまった気がした。だけどそれを見逃さなかったようで風見みのりはニヤッと笑った。くそ生意気なガキ。
「あってたんだ。」
「何がでしょう?」
「探偵してるってこと?潜入が多いから居場所とか連絡先とか教えられないの?」
「僕のことは知りたくないのでは?」
「だから安室さんについてじゃないって。お兄ちゃんのこと!」
「…みのりさんは風見が俺の部下だと見込んでるんですよね?ならば風見の職種を探索しているのは僕の職も探索していることとなるので黙秘権があります。」
「あーまってまって!わかった仕事のことは聞きません!え、っと…私、もっと安室さんにこと知りたいな〜…なんて。」
安室透を通してお兄ちゃんのことが知りたいと顔に書いてあるのがバレバレだ。俺はハーと息を吐き、乗ってくださいと彼女を車に乗せる。この子のことを気に入ってるのか、もしくはほっとけないのかは分からないけどこのまま放置することはできなかった。
彼女はおじゃましますと言いながら車に乗り、その顔はあまりにも楽しそうで何だか気が抜けてしまった。
「安室さん!今日はお泊りをします!」
「ぶっ…き、聞いてませんけど。」
「今言いました。」
「…君は、」
「前に終電逃しちゃったときにポアロに泊まった時の服があったのでそれを持ってきてるので拒否権はありません。」
「…またそれですか。」
やはり車に乗せたのが間違いだったのか、信じがたいことをこうも続けて言ってくる人だ。俺はまた小さくため息をつき、車を駐車場に停めた。
何かあっても知らんぞ、そう思って家の鍵を開けた。