あの後、安室さんは美味しいと言って私が作った料理を食べてくれた。何だかそれが少し照れくさくて、いつもみたいに話せなかった。
「じゃあ僕は洗い物しておくので、その間にみのりさんはお風呂でも入ってきてください。」
「へ?あ、いいですよ!私やりますので!」
「いいから。あ、部屋着は持ってるんですか?」
「…えと、明日の服を着て寝ます。」
「じゃあそこに置いてあるタオルと僕のですが寝間着を使ってください。」
「…でも、」
「洗ってあるので汚くありませんよ。」
「そ、そんなこと心配してるわけじゃないです!」
「そうでした?」
「もう!じゃあ有難くお借りします!」
「はい、どうぞごゆっくり。」
私は脱衣所に行きふーっと息を吐く。ていうかお風呂広いな。何だろう、今更ながら男性のお家に来てお泊りしてしまうということの自覚が湧いてきて、少し変な気分。
ダメだダメだ、考えるのを止めよう。明日朝から安室さんの尾行をするためのお泊り会だ。私は気を引き締め、シャワーを頭から被った。
「お風呂ありがとうございましたっ。」
「いえいえ。…ぶっ、みのりさん、手足生えてますか?」
「は、生えてますよ!!安室さんが大きすぎるんです。ゴリラですか全く。」
「言いますねえ、はい。お水どうぞ。」
「ありがとうございます。」
案の定、安室さんから借りたスウェットはぶっかぶかで。本当にぶっかぶかだからもはや笑えた。身長はまあ高いと思ってたけど多分脱いでも筋肉とかすごそう…って考えるのはやめておこう。
「本当はお酒飲めたらいいんですが。」
「未成年なのですみません。晩酌でしたら注ぎますよ。」
「おや、気が利きますね。」
「一応泊めさせてもらう身なので。」
安室さんが目の前に置いていた一升瓶を手に取り、既に持っていた小さめのコップにお酒を注ぐと、ここに座れと命じるように自分が座っているソファの隣をポンポンと叩いた。私はその通りそこに座れば、少し開けていた距離を安室さんが詰め寄ってくる。
男性とここまで近距離になったのは、お兄ちゃん以外でない。
「ち、近くないですか?」
「普通ですよ。」
「…酔ってます?」
「酔ってますかねえ?」
「…絶対酔ってない。」
「あはは、ばれました?ついみのりさんの反応が初々しくて可愛いので。」
そう言われてはいそうですかなんて言えるほど大人じゃなくて、私は安室さんなのにドキドキしてしまってもはや顔を上げられなくなってしまった。
「少しいじめすぎたかな?」
「…性格、悪。」
「心外だなあ。」
「安室さん、明日は何時に家を出るんですか。」
「ん〜そうだな。7時半頃になると思いますけど、みのりさんどうします?」
「私も一緒に行きます。」
「じゃあ駅までお送りしますね。」
そりゃそうだ。安室さんがお兄ちゃんのところまで連れてってくれるわけがない。でも明日は安室さんの尾行をしてやるんだから、覚えておけよ…。
「たくらんでる顔、してますね。」
「へ?いや、いや別に?」
「本当に嘘が下手な人だ。じゃあ僕もお風呂に入ってくるんで、みのりさんは眠かったらそっちの部屋のベッド使っても構いませんよ。」
「え?安室さんは?」
「僕はそこで寝るので。」
「え、いや家主がここで寝るなんて、」
「女性をここで寝かせるわけにはいかないので、言うこと聞いてくださいね。」
そう言って脱衣所に行ってしまったわけだけど、さすがに私だってそこまで図々しくない。髪を乾かして、携帯をいじりながらソファでゴロゴロとしていた。
そのままいつの間にか私は眠りについてしまった。