真っ直ぐな彼女

ああ、畜生。かっこ悪い。

年下で、部下の妹の彼女に先に告白をされ年上の威厳も何もないじゃないか。こんな少女みたいな彼女に振り回されるなんて、安室透らしくないな。でもまあ、降谷零は、言うほどに女に慣れているわけじゃないんだ。という言い訳を勝手に頭の中でしながら目の前で顔を真っ赤にさせた彼女を見ながら思う。

可愛い、今すぐ寝室に連れ込んで押し倒してめちゃくちゃにしたい。

でも彼女は先ほど嘘のようなことを言った。『彼氏なんていたことない』『安室さんが初めて』と。正直、もう頭がどうにかなりそうだった。


「安室…さん?」
「…ああ、ごめん。」
「え、やっぱり私は子供だから、ダメ、ですか…?」
「いや、ごめん、そういうごめんじゃなくて。」
「え?」
「…僕も、好きですよ。みのりさんのこと。」

柄にもなく少し緊張した面持ちで言えば、なぜか彼女少し不満そうな顔をした。


「それ、嫌、です。」
「え?」
「さん付けとか、僕とか…言ったら敬語も嫌。」
「……。」
「ダメ、ですか?」

ずるい。惚れてる弱みか、この顔でお願いされたら断れる自信がない。でも安室透でいるには、この口調を崩すと直ぐに本来の自分が出てしまいそうで、それが彼女にとっていいことなのか、悪いことなのか。瞬時に判断ができかねた。

「安室さん、」
「…なんでしょう。」
「私は、どんな安室さんも大好きです。かっこ悪くても、全部全部、好きでいれる自信あります。だから、私の前でくらい、何の柵のない安室さんでいてください。」


彼女の言葉はどうしてこうも真っ直ぐなんだろう。

思えば風見を探しているときだってそうだった。兄を探したいという気持ち一つで自分の人生を動かしているような子だった。俺は無意識に彼女を引き寄せ、ギュッと抱き締めた。

「好きだ」
「…はい。」
「安室透は、本当は完璧でかっこいい人間なんかじゃない。人並みに悲痛も嫉妬も憎悪もあって感情の渦が激しく回っている。」
「はい。」
「29歳のくせして、君に迷惑を掛けるかもしれない。」
「はい。」
「それでも、俺でいいのか?」
「…はい。安室さんがいいです。」


ああ、本当の名前を呼ばせたい。

俺はその言葉をグッと飲み込んで、彼女にゆっくりとキスをした。