「落ち着いた?」
「…は、い。」
「何か飲みますか?」
「…はい。」
私は安室さんの後ろを歩き、リビングに移動をした。大きな背中、この人が私を助けに来てくれて本当に良かった。
「カモミールティーです。」
「…美味しい。」
この人の前で、何回子供の用に泣いてしまったのか。今更ながら少し恥ずかしくなってきた。
「先ほどの話ですが、」
「…はい?」
「お兄さんを見つける前のように、戻りましょうか。確かに、僕は最近みのりさんから距離を取っていました。すみません。」
「…いいんです。でも、戻れるなら嬉しい。」
「はい。ただ、家に来るのは今日が最後です。」
「…どうして、ですか?」
家にいるときの安室さんは、時々口調が崩れたり、少し素に近いような感じがしてより好きだった、のに。
「どうしてって…みのりさん、彼氏がいるんならそんなこと他の男に言ったらいけませんよ。例えただの同僚でも、ね。」
「え、彼氏…?」
「本当は抱き締めて落ち着かせるのは彼氏さんの役目だったのに僕ですみません。」
「ちょ、ちょちょちょっと待ってください!」
「…はい?」
「私、彼氏なんていません!!」
大きな声でそう言えば、安室さんは驚いたように目を見開いた。
「え、でも、」
「あの、ドライブの話は、えっと…本当はあの日、安室さんを尾行しようと思って咄嗟に出た嘘で…そういう相手はいないんです。」
「…嘘?」
「ごめんなさいっ、あの時は安室さんを追えばお兄ちゃんに会えるんじゃないかって思って、必死で…。」
「じゃあ、いないんですか?彼氏。」
「…いません、今まで1回も、いたことないです。」
「…ハ?」
「だからあの、抱き締めてくれたのも、キ、キスをしてくれたのも、全部全部、安室さんが初めてで、だから、」
「ちょっと待て。」
私は顔を真っ赤にさせて安室さんを見ると、彼らしくもないような表情をしていた。うっすら頬を赤く染め、口元を手で隠して私から目線を反らしていた。
「あ、あの…。」
「…つまり、え、何?俺は勘違いしてあんな無理やりキスしたってこと?」
「……む、むりやり、ではありましたが私は嫌ではなかったで」
「あーまってまって。じゃあ、つまり、」
「好きです。」
もどかしい。
もう、早く言いたい。
「安室さんのことが、好きです。」