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目が覚めたら、隣りにドアップに降谷さんの顔があった。こう見るともうすぐ三十路なんて嘘のようで、私のこと子供みたいって言うけど降谷さんだって十分子供みたいだし、童顔だ。

「ん…おはよう。」
「あ、おはようございますっ。」
「ん〜…今何時だ?」
「えと、午後14時ですっ。」
「まだまだ寝れるな。」

そう言って降谷さんは私をギュッと抱き締めた。数時間前まで激しく抱き合ってたためお互い素肌だから、その熱がぐっと上がる。

「まだ、寝るんですか?」
「ん〜。」
「降谷さん、私飲み物を…。」
「まだ行くな。」

普段そこまでしない命令口調にドキッとしてしまう。私は布団を頭から被って大人しく降谷さんの腕の中にいることにした。

「みのり。」
「ひゃ、は、いっ」
「ははっさっきも呼んだだろ?」
「で、でもやっぱり慣れなくて…。」
「…可愛いな。」

そう言って降谷さんは私の頭を撫でた。なんだろうこの甘々な雰囲気…恥ずかしくて仕方ない。だけど幸せで、思わずニヤニヤしてしまった。

「お前、辛くても泣かないのに幸せ感じると泣くんだな。」
「…そうみたいですね。」
「正直あの涙にはキタよ。」
「…変態。」
「何とでも。」

それからどちらともなくキスをした。その後結局本当にまた寝てしまって、気が付いた時には日が沈んでいた。

「ん…あ、れ?」

起きた時には隣にいた降谷さんの姿はなくて、私は慌てて下着と服を身に付け部屋を出た。

「あ、起きたか。」
「…おはようございます、すみません…すっかり眠ってしまって…。」
「いいよ。何か食べるか?」
「い、いえ、今日はもう帰りますっ」
「このまま泊まっていけばいいだろう。」
「いやいや、もうこれ以上降谷さんにご迷惑をお掛けするわけにはいかないので…。」
「だから迷惑じゃない。」
「…そう、なんですか?」
「ああ。オムライスでいいか?」
「っはい!」

まさか降谷さんからオムライスという単語が出てくると思わなかったから、ここにいてもいいという喜びと共に笑みが零れた。降谷さんも少し笑った気がした。

でも、私たちはこの後どういう関係になるんだろう。上司と部下、以上になってしまった。恋人…?というには、なんというかおこがましいというか公安である限りそういう人間は作らない方が降谷さんのためでもあるのではないか…。じゃあしてしまったし、セフレ…?もはや誰にも分からない。

「辻川。」
「は、はい!」
「俺たちのことは同職のやつら以外に口外は禁止だ。もちろん家族や友人に対しても。」
「はい。…あの、1つ聞きたいんですけど、いいですか?」
「何だ?」
「…私たちの関係って、なんですか?」
「…ハ?」
「いやあの、何か上司と部下というにはその…してしまったし、どうなのかなと思いまして…。」
「…ハー…。」

降谷さんはため息をついて、出来上がったオムライスをテーブルに置いてからまた口を開いた。

「お前はアホか。」
「へ?」
「好きだって言っただろ。」
「っそ、そうでしたが、だ、で、も…。」
「お前は好きでもない男に抱かれるような軽い女なのか?」
「…違います。」
「そうだって言ったらこのオムライス投げつけるところだった。」
「じょ、冗談に聞こえませんっ。」
「冗談じゃないからな。」
「ヒッ…。じゃ、じゃあもしかして、今、降谷さんと私って、お、おおお付き合いしているということになるんでしょうか…?」
「それ以外に何があるっていうんだ。」

そんなあっさり!私は途端にこの状況に緊張してしまった。

「話はそれだけ?ほら、食べろよ。」
「…ありがとうございますっ。」
「そうだ、風見にはもう連絡済みだから。」
「ぶっえ、あ、」
「俺がいない時はほぼ風見についてもらってるからな。お前が浮気しないように監視も兼ねて。」
「し、しませんよ!お、オムライス美味しいです。」
「それはよかった。」

やっぱり降谷さんは優しく笑う。私もその顔についついつられてしまうんだ。