初夜


研磨の匂いでいっぱいのベッド。押し倒されると同時に香りが広がってわたしの心を落ち着かせる。見上げると少しだけ余裕の無さそうな研磨の顔がある。ああ、この人にこれから抱かれるんだなと思うと泣きそうになるくらいに嬉しくなった。

「最初に言っとくけど、余裕なんてないし経験も少ないから」
「……わたしも」
「……え、あ、あー…別に俺に合わせて気を遣わなくても」
「……本当に経験なんて少ないし、余裕もないよ」

みんな言う、グラドルってセックスとか凄そうだって。DVDでしてることなんて指示されたことだけだしそんなこと自分自身ではしたこともないのに。でも勘違いされるくらい演技が上手く出来てるって無理やりポジティブに変換してるけど、付き合っていざやってみると普通以下じゃん、なんて勝手言って捨てられて。
だから研磨にはそんな風に思って欲しくないし少しでも勘違いがあるのなら弁解をしたい。


「勘違いされやすいんだけどね、本当全然なんだってわたし。だから、それが理由で別れられたこともあるし、正直すごい怖いよ」
「…………みのり、」
「ただ胸がでかいだけかよって、グラドルのくせしてって……他の女の方がよっぽど上手いとか、……あはは、そんなことばっかり言われて」
「みのり」

研磨はわたしの名前を呼んで壊物でも包むように優しく抱き締めた。期待、させてしまったのかもしれない。でも、それでも彼はこんなにも優しく私を抱きしめてくれるんだなぁって思うと涙が溢れ出てきた。

「ごめん、俺が偏見じみたこと言った。……ただ、これだけ…その……、か、かわいいし、付き合った回数とか俺よりも多いと思ったから必然的に経験が多くあるのかと思っただけで職種は関係ないんだ。……でも勘違いさせたよね、ごめん」
「っ……ぅぅ、なんっ、で、、けんまは、そんなにやさしいっの、ぅ〜〜〜」
「……優しくてスマートだったらこんな風に泣かせてないでしょ」
「ぅぅ〜っ…かわいい、って、いってもらえたぁ、」
「……そこ突っ込むの」
「だってぇぇ、うれしくって……でも、もうわたし、ぜったいえっちのとき、ブスだから、ぅっ、、かわいいって、うれしかったぁ〜!っぅ〜〜」
「……ふっ、」

研磨が、笑ってる。わたしはぐちゃぐちゃの顔を隠していた手を外して研磨に目を向けると猫目の茶色の瞳が視線を捉える。ドクンと心臓が高鳴る。だってすごく、優しい眼をしてる。


「言ってなかった?俺はどんな時だってみのりのこと可愛いって思ってるけど」
「ひっ…し、しら、ないっ!わたしだって、研磨の、ことっいつだってカッコいいって思ってる!」
「知ってる。もう十分聞いてるからいいよ」
「やだ!言い続けるっ……じゃないとわたしの研磨大好きメーターが爆発しちゃうんだもんっ」
「…………はぁ、ねえ、続きするけどいい?……俺もみのりのこと、抱きたいってずっと思ってたから」



ゆっくりと研磨の顔が近付き唇が重なった。気が付けば涙は止まっていて私は研磨の首に腕を回すと重ねた唇に吸い付くようにより深く絡まる。
研磨は多分あまりディープキスが好きじゃないんだと思う。少し舌が絡まると離れようとしてしまう。だけど私が離さないように舌先を巻き取り啜ると意図を組んでくれるのか意地になっているのか真理は分からないけど少し意地悪にじゅうと吸い取られ思わず上擦った声が出てしまう。

「んぅ、……っン、はぁ、……け、んまぁ、」
「…………うん、」

すき、だいすき。何度も唇を重ねては離れ、また重ねて深まる吐息が広がる中研磨の手がわたしの耳、輪郭、首と徐々に下へと滑らせ胸に触れる。一瞬動きが止まった気がして目を開くと研磨は目を見開いてびっくりしたような顔をしていた。

「けん、ま……?」
「っあ、ごめん、……いや、なんか……知ってたけど、すごいね」
「……?あ、おっぱいのこと?」
「……うん」
「……ふふ、いい?悪い?」
「……みのりの身体なんだから悪いところなんて無いでしょ」
「…………ふふ、触って?」




全部全部、研磨だけに触ってほしいんだよ。