しあわせを謳う(完)


夜久さん、…衛輔のサポートを離れて少し経ったけど変わったことが2つあった。1つは社内関係者の人間に私たちが付き合ってることが多くの人に知れ渡り、試合のチケットが衛輔に言わずとも家に送られるようになったこと。おかげで私はバレーボールのルールもロシアの色んなチームのことも分かるようになった。2つめは……。

「もりもり〜!」
「おー美真〜!おはよう、昨日眠れたか?」
「うん!!ゆーえんちたのしみだねえ!」
「おー、何から乗りたい?」
「えっとね、ん〜〜ままぁ!なにがあるの!?」
「んーそうだなぁ、ぐるぐる〜って回るやつとゆっくりお馬に乗って回るやつと空をブーンって飛ぶやつとかたくさんあるよ?」
「そらブーンってしたい!もりもりもしたい?」
「いいな!じゃあまずそれ乗ろうか、みのり、手」
「えっ、」
「あー!もりもりずるいー!みまもままとおててつなぎたい〜!」
「だめ〜!今日は俺が繋ぐ日だろ?ほら、美真は俺と」
「ん〜!!」

美真が衛輔のことをもりもりと呼ぶようになったこと。それは恐らく私の影響でもあるんだけど、その言い方があまりにも可愛くて美真が名前を呼ぶ度に可愛くて頬が上がり口元が緩んでしまう。そして衛輔も美真に容赦なくなったというか…今じゃ子供が2人いるみたいな感じだ。
私の手をぎゅっと握ってにこりと笑った後に行こうと前に進む。いつの間にかぷりぷりしてた美真も目先にあるアトラクションに気が行き衛輔と楽しそうに話をしている。
昼下がりの午後、これが幸せっていうんだろうなという思いに耽る時間もなく私は引かれる手を離さないように掴んだ。
















「ごめんね、重いでしょ」
「全然?現役スポーツ選手舐めんなって」
「そうでした、でも無理しないでね?衛輔の身体は一つしかないんだから」
「おー。」

遊び疲れたのか美真は遊園地のゲートを出た瞬間に衛輔の背中で寝てしまった。安心しきってる顔、まるで本当の家族みたい…だなんて、

「なる?」
「………え?」
「だから家族」
「っ…、わ、わたし口に出て、」
「え、気が付いてなかった?……ふっ、はは!みのりって結構そういうところあるよな〜ちゃんとしてんのに無意識にそういうこと言っちゃうところとかさ、すげぇ可愛い」
「あ、や、えっと、さっきのはただの言葉の綾というか、なんか違くて」
「ちげーの?」
「……ち、がう、けど…ちがくない、けど、」
「じゃあなろ、家族」
「ま、まって、」
「ん?何か問題あった?」
「だって」
「あ、そうだよなこういうのってちゃんプロポーズしなきゃだよな。わり、ちょっと今のなし」
「へ?」
「来週土曜、モスクワにある展望デッキ行って、近くのレストラン予約しとく。その日は2時間でいいからライアン家に美真預けて2人で行こう」
「っな、」
「返事、考えといて」


夜の街頭に照らされた彼の顔は少し頬を赤く染め、悪戯っ子のように笑った。
1週間後、私たちは慣れない高級レストランとカップルたちが至る所でキスをしている展望デッキに気まずさと恥ずかしさでいっぱいになり結局自宅のリビングでプロポーズの返事をすることはまだ先の話だ。





end.