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「すごい…。」
「あれ、みのりちゃんうちの試合見たこと無かったっけ?」
「あ、はい…練習しか。」
「意外と強いでしょ?それに影山と日向が入ってきたことによってうちは大きな武器を手に入れたの。」
「……。」
「本当はね、まだメンバーが2人いて、…」

清水先輩がいろいろ説明してくれているのに耳に入ってこないくらい試合に没頭した。高校バレーを生で見たのが初めてだからかもしれない、けどその迫力は想像を超えていた。

そして何よりあのトス捌き。影山は神ってた。あのトスを上げるのにどれくらい努力をしたんだろう。その姿は悔しいけどかっこよくて、負けた気分になった。

試合終了の合図。最後に及川先輩が入ったけど、日向が攻撃を決めた。烏野は勝利し、練習試合は終了となった。私は清水先輩に声を掛け、外に出た。見てよかったと思う反面、こんな思いするくらいなら見なければよかったとさえ思っている。私にもあんな仲間がいれば、今ここにいなかったかもしれないのに。

悔しくて涙が溢れた。

「あれ〜みのりちゃん!え、ちょ、どうしたの!?」
「っお、いかわ先輩は、いっつも場が悪いっ…。」
「え、何何どうした〜。」

渡り廊下の水道で泣いていたら、及川先輩が声をかけてきた。涙に気がついたのか、及川先輩が近づいてきて私の背中を擦ってくれた。スマートにこういうことをやってくる辺り、本当にモテる人だ。

「すみませんっちょっといろいろ、思っちゃって。」
「試合、見てくれてたよね。まあ及川さん最後しかいれなかったけど、みのりちゃんのことはすぐに気がついたよ。」
「そうですか、」
「反応薄!…もしかして部活、うまくいってないとか?」
「!?」
「図星だ。周りとの熱量の差でも感じちゃったのかな。みのりちゃん上手いもんね、バドミントン。」
「な、んで…。」
「及川さんには何でもわかっちゃうよ〜。ほら、つらいなら泣いちゃいな。誰も見てないから。」
「っ〜〜うう、ぉいかゎせんぱいのくせに〜〜 」
「言い方!よしよし、つらかったね〜。」

悔しいけど及川先輩に肩を寄せ、頭を撫でられていると安心した。それと同時に自分がずっと思いこんでいたことに気がついてくれたことに、涙が溢れた。

無意識に考えていた。私はもうバドミントンを諦めた方がいい、ここに来てしまった時点で終わり。でも練習をすればもっとやりたくなったし、勝ちたいと、負けたくないと思ってしまって、でもその思いは私1人だけだった。勝負事を楽しむには強さがいるのに、誰もそれは求めてなかった。

それに諦めたつもりでいた。でもどうしたって心の奥底に眠る私の闘争心は消すことはできなかった。今日の試合を見てそう感じさせてられてしまった。

「何やってんすか。」
「おやおや飛雄ちゃんじゃないですか〜。」
「…かげ、やま、」
「っ及川さん!辻川に何してんすか!」
「やだなあ、そんなに怒らないでよ。」

及川さんは私の肩をギュッと自分の方へと引き寄せた。影山が怒ってるのを見てわざとやってるに違いない。影山はすごい血相でこちらに来るなり、私の腕を引いた。

「辻川は、烏野です!」
「「…は?」」
「だから及川さんには渡さない。」
「…あの、」
「飛雄ちゃん、何か勘違いしているようだけど俺はみのりちゃんのことを慰めてただけだからね?別にみのりちゃんのこと取って食おうってわけじゃないよ。」
「…取って食おうって、」
「まあ泣いたみのりちゃんには少しそそられたけど。」

この人、やっぱり性格悪い。すっかり涙が引いた私は真っ直ぐと及川先輩を見ると、ふと笑われた。でもその笑みはすごい優しくて、悔しいけど安心してしまった。

けど何故か影山の心境は平和ではないらしくて私のことを掴む腕の力がどんどん強くなり、顔も歪み切っていた。こんな影山見るのは初めてだ。


「影山、痛い。」
「…行くぞ。」
「ちょっと!」
「みのりちゃん、また何か困ったことあったら連絡するんだよ〜!」
「あ、ありがとうございます。」

私は影山に引っ張られるようにして部室に連れ込まれた。