「影山?」
辻川が、泣いていた。
中学時代から仲が良かった。いつも強くて、さばさばしてて冷静な辻川といるのが居心地がよかった。辻川はバドミントンを、俺はバレーに全力で境遇も似ていた。だからこそお互い一緒にいると頑張れたし、辻川が頑張ってるのを見てると俺も不思議と頑張れた。それは高校に入っても変わらない。
でも俺には仲間ができ、辻川は仲間を失った。辻川が悩んでいることはわかっていたけど、俺は何て声をかければいいのか分からなかった。なのに及川さんはそれをいとも簡単にやっていてすごい悔しかった。
俺が1番に辻川のことを救いたかったのに。
「手、悪い。」
「あ、ううん。」
「…大丈夫か?」
「平気。」
「手じゃなくて、泣いてたの。」
「ああ、うん。もう落ち着いた。」
落ち着かせたのが及川さんっていうのが余計にイライラさせた。俺の方が毎日一緒にいるのに。
「影山。」
「…何だ。」
「試合、すごかった。純粋に楽しかったし、影山すっごいかっこよかった。」
「……。」
「…何か言ってよ。」
「あ、いや、だって辻川からそんなこと言われると思ってなくて、」
「…あはは!影山顔真っ赤!」
「う、うるせえ!」
辻川に初めてカッコいいって言われた。俺たちのバレーをみて楽しかったと言ってくれた。すげえ嬉しい。俺は誰よりも辻川に俺のバレーを認めてもらうのが嬉しかった。一緒に頑張ってきた、仲間みたいなものだ。
今度は辻川の手を優しく握る。
「辻川は、1人じゃない。」
「…え?」
「俺がいる。周りに同じところを目指しているやつがいなくても、俺がいる。競技は違くても、気持ちは同じだ。1人で悩むな。」
「……。」
そう言えば辻川はそのまま俺の胸に身を委ねてきた。俺は一瞬にして体が硬直し、胸がドキドキと高鳴った。胸辺りまでしかない上に、細くて華奢な体つきは俺と全然違って何かいい匂いもするし頭がくらくらしそうだ。
「影山、ありがとう。」
「お、おう。」
「すっごい今の嬉しかった。」
「…そうか。」
「うん。私、頑張るね。」
「おう。」
「後あんた、女子に免疫なさすぎ。心臓の音うるさい。」
「んな!うっせえ!!」
ようやく顔を上げた辻川の顔はいつもの笑顔で、すごい安心した。辻川じゃなかったらこんなにドキドキしてない、その一言は今はまだ言えなかった。