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「失礼します〜あ、先生いた。」
「辻川さん、お疲れ様です!あ、第二体育館ですね!じゃあ僕閉めに行ってきちゃうので、高橋さん影山くんのボール上げ任せてもいいですか?」
「え、」
「お願いしますね!」
「…頼む。」
「まだやんの?」
「あと10本だけ。」
「はいはい。いくよ〜?」

前からだけど、最近はいつにも増して練習の虫な気がする。影山のバレーに対する情熱が、本当に。

「好きだなあ。」
「…は?」
「あ、ごめん口に出してた?」
「何が?」
「え?」
「何が好きなんだよ。」
「…影山がこうやってバレー頑張ってるの、見てるの好き。」
「っ……、」

突然なんだって怒られそうだと思い、私はじゃ、また後でと言って体育館を出ようとした。しかし影山が私の名前を呼ぶから、振り返ったら影山に抱きしめられていた。

最初何が起こっているかわからなくて、頭が動転したけど、前にも来たことのある胸の鼓動が、私を安心させた。

「か、げやま?」
「言い逃げすんな。」
「別に逃げたわけじゃ、」
「俺だって辻川が好きだ。…頑張ってる、お前が好きだ。」
「……は?」
「だーもう言わねえ!俺は言った!」
「いや意味がよく…。」
「はあ!?今のがわかんねえっつーのかよ!」
「…好きって仲間としてってことだよね?」

影山が今恋愛にうつつを抜かすはずがない。だからそんなわけない。そうでも思わないと私の心臓がうるさくて仕方なかった。

一度抱きしめていた腕を離し、影山と目が合う。こんなに真剣な眼差し、バレー以外で初めて見た。

「この状況でそうだと思うか?」
「…いやだって影山だし。」
「俺のこと何だと思ってるんだお前。」
「バレー馬鹿。」
「…間違ってねえけど!」
「だって影山、今恋愛に時間かけてる余裕ないでしょ?それにうちら、頑張るって言ったじゃん。部活。」
「……。」
「だから、例えばわたしたちが両想いだったとしても、今はいいんじゃな」
「俺はやると決めたことは絶対やる。例えそれがバレ―だったとしても、恋愛だったとしてもだ。」
「……。」
「俺は辻川と特別な存在になりたい。」
「…もう特別だよ。」
「ぶっちゃけお前が可愛く見えて仕方ねえ!もっと触れたいし、恋人らしいこともしてえ!」
「ハア!?」
「だから!…だから、俺と、つ、つきあってほしい。」

こんな真っ直ぐな告白、他に聞いたことがあるだろうか。180cm越えの男子が顔を真っ赤にさせて自分の気持ち全部晒して。私はもう、逃げられない。

「いいよ。」
「…まじか。」
「うん。」
「お、お前の好きって、それこそ俺のこと男として見たことあるのか?」
「…ハア?」

こいつ、と思ったけど確かにあまりにさらりと言ってたから、あまり信憑性がなかったかもしれない。もう影山にドキドキさせられっぱなしだったのに。

私は背伸びをして影山の首に思いっきり抱きついた。ぐえっという声が聞こえたけど気にしない。

「バーカ、大好きだって言ってんじゃん。」
「っく、」
「あはは、何それ。」
「くそっ負けた気分…。」
「影山が私に勝ったことある?」
「ああ?勝ちっぱなしだわ!」
「うっそだー。」

「あの〜…そろそろ先生入ってもいいかな?」
「「…あ。」」

武田先生がにこにことこちらを見て笑っている姿を私たちは直視できなかった。