2017年、冬
2017年、冬。
年末の残業ラッシュが終わり無事仕事納めとなったみのりは同僚が最近ここのペットショップのTwitterが可愛くて〜!と見せてきたと思ったらその翌週に猫を飼い始めたのをきっかけに「場地さんもペットどう!?いいよ!店員さんめっちゃイケメンだったし!」とゴリ押しされるがまま一緒にペットショップに行くことになった。
ペットかぁ…このままずっと1人の予定だしいいかも、なんて行くまでは乗り気じゃなかったもののいざお店の前に着くとどんな子がいるのか少し楽しみになっていた。しかしお店に入り、いらっしゃいませと店員さんの声に私は勢いよく顔を上げた。
「か、一虎くん!?」
「……!も、しかしてみのり…?」
「そう!そうだよ!一虎くん一度出所してまた入ったって聞いてたけどもう出れたんだね…!」
「……ああ」
「久しぶりだね、元気そうでよかった」
一虎は気まずそうに顔を逸らす。みのりは知らなかった。兄である場地圭介が命を落とすことになったきっかけの一刺しを。周りが全員みのりには言うな、と口止めをしていたのだ。
そうとは知らずみのりはあれ、久しぶりに会ったから気まずいのかなと思いながらも再会に喜んだ。
「知り合いなの?!」
「あーちょっと昔馴染み」
「えええ言ってよ!」
「言ってどうするのよ…、ここ一虎くんのお店?」
「いや俺は雇われ、ここは」
「一虎くん、あんたまたキャットフードの袋開けっ放し………、みのり……?」
「っ………!ち、千冬……?」
何故、ここで出会ってしまったんだろう。困惑の中でもどこか嬉しさと嬉しいのに苦しさがあって視界が歪んだ。しかし千冬は顔面蒼白としてみのりの腕を掴みちょっと来いとお店から連れ出され遠くから聞こえる同僚の声も小さくなっていった。繁華街の夜は明るい、2人は人混みを避けてどんどん進む。
千冬に腕を掴まれたのはあの頃振りだった。直ぐ私が振り解こうとすれば振り解けてしまう腕の力加減は昔から変わらない。その優しさにあの頃と変わらない千冬を感じて涙腺が揺れる。
「ど、したの?」
「………店のこと、ドラケンくんから聞いたの?」
「え?あ、ううん…さっきお店にいた同僚がそこで猫飼うことにしたから私も勧められて来ただけだよ」
「……はぁ、何だよその偶然…」
「……ね、これまでずっと会わなかったのに再会って案外偶然がつくるんだね」
「……お前、」
「ん?」
2人はここでようやく目が合った。千冬は金髪だった髪が真っ黒になっていて顔付きも少し大人になっているように感じた。一方で千冬は大人になったみのりを見て驚いた。長く綺麗だった髪は肩にかかるくらいの長さになっていて昔から綺麗な顔をしていると学校中で評判だったけど今は綺麗な顔立ちはそのままで更に化粧を覚えた大人の女性は見違えるほどに綺麗だった。
「っ……いや、なんでもない」
「……千冬、元気にしてた?」
「おう、見ての通りな」
「仕事は?あそこ千冬のお店?」
「そう」
「……そっか、すごいね」
「別にすごくねえだろ」
「でも一虎くん雇ってるんでしょ?人を雇ってるなんて業績が良い証拠じゃん」
「……………」
「……千冬?」
「お前もう来んな」
「……え?」
「店には来るな、……もうお前とか会わない」
「っ………」
「猫や犬なら他の店でも見れんだろ、……突然こっちまで連れ出して悪かった。じゃあ俺はこれで」
「バカ!!!!」
「っおい、」
「バカ!!バカバカバカ!!!!!!」
「、………」
「なんで?……なんで、」
「っ……もうあの頃には戻れない」
「千冬、わたしは」
「悪い」
12年振りに見た千冬は最後に見た泣き顔と少し似ていた。あの時千冬の前では見せなかった涙がツーっと頬を伝い追いかけることも出来ない千冬の背中をただ見つめた。