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「こんばんは!」
「は?………お前、」
「お客さんにお前?口の聞き方に気をつけてほうがいいんじゃないですか千冬くん」
「……………」
「今日一虎くんは?」
「……今日は休み」
「そっか、……今日定時であがれんの?」
「………まあ」
「じゃあご飯行こ」
「は?」
「外で待ってるから」
「いやお前」
「待ってるから」


みのりは嫌な客だなぁと思いつつも何かを買うわけでもなくお店の外に出て屋根下に立った。外は雨、冬の雨は身体に染みた。だけど12年も会わなかった、ーーたった1時間半、全然待てると思い手を擦り寄せた。


















*



千冬は迷っていた。自分はもうみのりと会うべきじゃないと思っていた。だけど自分はあの頃から変わってない。場地さんのことだって、1日も忘れたことはない。一緒に拳を振り上げて勝利に喜んだこと、ペヤングを分けて食べたこと、東マンで過ごしたことから学校生活の中まで…いつだって先を歩き笑う場地さんは今でも俺の希望だ。
だから12年という歳月が過ぎても場地さんと同じようにみのりのことも……ーーー好きだ。今でも馬鹿みたいに好きだ。

喧嘩越しに話した会話も一緒に行ったみんなと一緒に行った海もメイド姿のまま回った文化祭も2人で行った海も…それだけじゃない、小さな日常の楽しかったことや喧嘩したこと、みのりと一緒にいたあの日々が愛おしくてたまらない。場地さんの最期の日、ーー俺は泣くことと謝ることしか出来なくて、情けない俺に優しく声をかけてキスをした。
正直あまり覚えてないけど俺にとって初めてのキスは涙のしょっぱい味だった。

みのりは場地さんの死を誰かのせいにしていない。俺でも一虎くんでもマイキーくんでもない、ただ場地さんが死んだということしか知らない。
でも俺は知ってるーーその死の背景にあることを。だからこそもうあいつに顔向け出来なかった。


その時もう約束を守れなかった俺がみのりの側にいちゃいけない、そう思って離れたのに、……12年はそれでいれたのに。何で今更、会いに来るんだよ。











千冬は待ってると言われたみのりから避けるように仕事が終わった後裏口から出た。外は雨が降っていて気温も低くそう長くは待てないだろう。
もしかしたらまだ待ってるかもしれないと思うと少し胸が痛かったがみのりに声をかけることなく駅の方へと向かった。





ーーそこから3時間。
千冬は職場から2駅先の自宅にとっくに着いていた。1時間半前に一度、1時間前に一度みのりからの着歴が残っていたけどそれ以降は通知がない。
さすがに帰ったか、……帰ったよな。多少の不安が千冬をそわそわとさせる。地獄は既に0時を回っていた。電車だってもう終電はギリギリ。考えるな、大丈夫。


「っあーーーークソ!」


ダメだ、もしものことを考えると寝れる気がしなかった。
気がつけば千冬はダウンを羽織りマフラーをつけスマホと財布だけ持って家を出た。電車は終電となっていた。