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「い、いってらっしゃい………」
「‥‥‥‥‥」

その言葉に返事はない。でもそれが普通だから、別にいい。そもそもどうしてただの中学背時代の爆豪くんと私がこうして一緒に住むことになったのか。
それは遡ること半年前。















半年前。

『本当に申し訳ございません。』

まさか1日で2回もその言葉を聞くと思わなかった。
私は大学を卒業して実家を飛び出し、決まっていた東京への職場と新居で華々しい新しい生活をスタートする予定だった。それなのに……、

「家が借りられないって、どういうことですか…?!」
『ですので、現在借りてる方がやはりそのまま継続したいとのことでして、今回は白紙とさせていただきます。』
「そんな、わたしどうしたら、」
『もちろん別の物件もご案内させていただきます。ただお客様の条件に合う物件は少々難しいのでご予算が上がってしまうんですが…』

そう言われて案内された物件は想定より3万オーバー。そんなの初任給が高々20万やそこらの新入社員にとって払えるはずがない。それでも住民票の移動だって張り切って契約前だけど面倒だから早めにしてしまえと思って済ませてしまっているし、今更どうしろというのだ。泣き寝入りして実家に戻れというのか、そんなのありえない。
いったん不動産からの電話を切ると連続で見覚えのある連絡先から電話が入る。確か、就職活動中何度もかけた電話番号だ。

「はい、辻川です!」
『辻川みのり様のお電話番号でしょうか?こちら株式会社WWWと申します。』
「はい、お世話になっております。」
『大変申し上げにくいのですが、この度弊社の部署整理の関係上辻川様の配属予定だった部署が廃止となってしまいご内定を取り消しさせていただくご連絡をさせていただきました。』
「………へ?」
『誠に申し訳ございません。辻川様の更なる飛躍を願っております。それではこちらの内容はメールにても同様にお送りさせていただきますのでご確認くださいませ。何卒宜しくお願い致します。』

連続で信じがたい事実を突きつけられ、私は思わず大都会の中呆然と立ち尽くす。これは現実……?もしかして夢なのかな?
そんなことを思っているとポツリ、と雨が降ってきたと思えばいきなり大粒の雨が降り注いだ。
ドンッ。
「ってーな突っ立ってんじゃねえよ!」
「っ…すみませ、」
「邪魔だな、ったく」
「っぁ、」

道端に投げられてしまった携帯は画面がボロボロになっていた。
もうなんか、楽しみにしていた東京での生活が全て白紙に戻ってしまった上にこんな状態でいることに悲しくて涙が出てきた。それでも東京にいる人たちは雨に打たれながら座り込んで泣いてる人は”怪しい人"と捉えられてしまうようで誰一人として近づいてこない。
もうどうにでもなれ、そう思っていた瞬間だった。

「んなところで泣いて何してんだ」
「………へ?」
「おら、立て」
「あ、」

これが私と今やプロヒーローとして活躍している爆豪勝己との再会だった。