うちはツキ、という人を紹介された。
以前、資料室を片付けるのを手伝った時に少しだけ聞かせてくれたうちは一族の、師匠と仲の良かった人で、シズネさんの初恋を奪った人。そのシズネさんの言っていた通り、果てしない美人。
木ノ葉に戻ったツキさんは、火影直下暗部の部隊長に就任することになった。
初めて聞かされた時は驚いたけれど、師匠や自来也様、あの大蛇丸と肩を並べていた人だから、と納得した。
(ちなみに、ツキ様と呼ぼうとしたら、拒否された)
今の火影直下暗部やその部隊長だった人から、文句のひとつでも出るかと思ったが、異論はなかった。
師匠が出させなかった、というのが正しいのかもしれないけれど。
「問題はあの年寄りどもだね」
「大丈夫よ。私、このポストじゃなきゃ復帰しないから」
「……」
面倒くさいと顔に出していた師匠に、彼女はニコニコと告げた。
彼女ほどの忍、詳しくは知らないけれどきっと凄い忍を、何もさせずに居座らせる余裕が木ノ葉にないことを分かっているのだろう。
たしかに、その条件なら上層部だって飲むしかない。
「何を言われても、綱手の言う事しか聞く気はないけどね」
「ふっ…お前を正しく扱えるのは多分私だけだろうよ」
「それはそう」
そしてその通りになった。
その場に居合わせたシズネさんにいわく、あの果てしない美人が凄めば怖いのは説明しなくても分かるでしょうとのことで。
なぜか想像したくねェ…とシカマルがため息をついていた。
それ以降、ツキさんは昼間は綱手様の側仕えで事務仕事を手伝い、それ以外の時間は私の修業に付き合ってくれることになった。
「うん、聞いていた通り筋がいいね。頭も良い。…もう少し肩の力が抜けると良いんだけど…少し休憩しましょうか」
水分補給して、木陰に座る。
これはチャンスなのかもしれない。
この数日、彼女に修業を見てもらったり、師匠やシズネさんとのやり取りをそばで見ていて、どうしても気になった。
前から仲が良いとは聞いていたが、上層部に脅しを掛けてまで師匠のそばにいる選択をしたツキさんの行動。
そして、妙に近い二人の距離感。
私といのの様な関係に見えて、なんと言うかそこに湿度を感じて、そんな二人の関係が何なのか、気になって仕方がない。
「あの、ツキさん…ひとつ聞いても良いですか?」
「なぁに?」
「師匠…綱手様とどういう関係で…?」
「ふふ…、気になる?」
「妙に近くて、妙に遠くて……」
くすくすと声を上げてツキさんが笑う。
言い訳している私から視線を外し、建設中の顔岩を見上げた横顔に思わず見とれてしまった。
親友?家族?ライバル?
いったい何なのだろう、と期待に胸を膨らませる。
「親友以上、恋人未満…かな。今はまだ」
「えっ……」
とても柔らかく、優しい声でそう言って微笑む。
何故か私の顔が熱くなった。
「みんなには内緒よ?今、再構築中なの」
「は、ハイ!…私、応援します…!」
「ありがと、サクラ」
綺麗な人、と思っていたけれど、照れくさそうに笑ったその顔は誰よりも可愛いと思ったのは私だけの秘密。
「綱手様、ツキさんのことかなり好きですよね…?」
「んふ…それ、本人に言ったことある?」
「殺されそうなので言いませんっ」
「言ってみる?…ほら、来たわよ、本人」
「えっ、え!?」
思わぬ提案に動揺する。
落ち着く間もなくその本人が来て、慌てた様子の私に師匠は顔を顰め、ツキさんは楽しそうに笑っていた。
「様子を見に来たと思ったら…ツキ、何を吹き込んだ?」
「さぁ…?でもサクラは聞きたいことがあるみたい」
「ツキさん!」
「聞きたい事ぉ?なんだ、言ってみろ」
頬が熱くなって、赤くなっているのがわかる。
守ってあげるから大丈夫よ、とツキさんに促されて、このままでは何も言わなくても叱られそうだと覚悟を決め、私を見下ろす師匠を見上げた。
「綱手様は、その…あの、…ツキさんのこと…かなり好き、ですよね……?」
「…………。ツキ…お前覚悟はできてるんだろうね」
「大変!サクラ、逃げるわよ」
「え!?きゃっ……」
「逃がさん!」
何かを理解する前にツキさんに抱えられる。
猛スピードで逃げ出して、師匠は鬼の形相で追って来ていて、巻き込まないで欲しい、とため息をついたのだった。
── 次の日、どえらい美女に誘拐されたと勘違いしたいのやヒナタに、心配されたのはまた別のお話。
( いいんですか?怒ってますけど… )
( 大丈夫よ、照れ隠しだもん )
( えぇ…… )
( 否定しなかったでしょ。ほんと、可愛いんだから )