あまり言葉も交わさないまま帰路に着く。
控えめに絡んだ小指が余りに可愛くて、にやけそうになるのを抑えながら彼女の部屋までの道を歩く。
照れくさそうにしているのを誰にも見られたくなくて、誰にも会いませんようにと密かに願っているうちに到着する。
同じ家に帰るのは初めてではない。
若気の至りで、昔家出したことを思い出す。
行き場もなく、一人だった綱手の家に転がり込んだ。
戦時中だったから、殆ど家には居なかったけれど。
あの時も、好きだった。
多分、もっと前から。
けれども当時、踏み出せなかったのはお互いの立場…うちはの異端児と千手の姫君では、余りにも時代が早すぎたのと、親友という彼女の隣を誰にも渡したくなくて、その仮面を外せなかったからで。
「懐かしいわ…、この感じ」
「私は複雑なんだが?」
「ごめんってば…許して」
「ったく……」
ダンゾウに狙われていることに気付いた時、私は彼女から離れることを選択した。
若かったし、浅慮だったと思う。
長く隣に居たかった。
そばでずっと一緒に居たかった。
それが出来ていれば、何かが変わっていたかもしれない。
だからこれからは ──
「もう、どこにも行かないから」
「次は無いからな」
「うん」
ぐに、と頬を摘んで笑う。
まずは風呂だな、と支度を始めた後ろ姿を見送り、こちらを覗いている月を見上げた。
これからは、側で守る。
そう、決意を改めた時 ───
「おい、ツキ」
「うん?」
「一緒に来ないのか?」
当然のように言った彼女に思わず吹き出す。
敵わないな、と力が抜けた。
「なんなんだいったい……」
「ううん、当たり前みたいに言うから」
「うるさいね…」
頬を染めて、そっぽを向いた彼女の手を取る。
そのまま指先に口付けると、睨まれてしまった。
「さっさと入って、寝るぞ」
「うん」
── 一緒に眠ったその日は、久しく深い眠りだった。
( ただし、じっとしてろよ )
( 生殺し… )
( 何か言ったか? )
( イエ… )