晴天の土砂降り

ごとごと、ごとごと、キャリーバックが音を立ててタイヤが回る。
ふらりふらりと様々なところへ足を運び、空っぽだった世界を埋めていく。写真、物、なんでもいい。
崩れた世界を何かで埋めていく。
なんでも見透かすような太陽から身を守るように日傘を差し、日陰の中で首元のマフラーに顔をうずめる。
あーめあーめふーれふ−れ、かあさんがー、…――
水を弾くブーツでくるり、人気のない公園で踊るように回ってみる。
くるくるくるるんっ、たのしいな。






人気のない公園。古びたベンチに腰を下ろすとぎしりと不気味な音が鳴った。
肩にかけていた鞄から、スケッチブックと筆記用具を取り出して、何を描こうかと空を見上げる。
空色の絵の具をぶちまけたみたいな雲一つない空の下、木の陰になったベンチの上で何も描けずに何十秒、何分、何十分。どんどん過ぎていく時間を見て重いため息が出た。あ、幸せが逃げちゃった。なんて、

あーめあーめふーれふーれ、かあさんがー、…――

ふと聞こえてきたそんな歌。よく幼稚園とかで歌ってそうな、よくある歌だ。
くるくるくるるんっ、傘が回ってカラフルな色が混ざっていく。
こんなに晴れているのに、その傘を持っている女の子のいる場所だけが土砂降りの大雨みたいだった。そんな中を楽しそうに回る女の子、二つに結ばれた黒い髪がふわりと揺れては肩にはらりと落ちていく。
あぁ、綺麗だな。って。なんとなくそう思った。
真っ白だったスケッチブックに手を伸ばし、"雨"の中を踊る不思議な女の子を描いていく。

白黒で描かれた絵が完成したころには、その女の子はもうとっくにいなくなっていて、少し残念だと思っている自分がいた。

「また、会えたらいいな…」


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