某探偵事務所。
心地よい日差しが窓から差し込み、室内をゆるりと照らす中。二人の男女が向かい合って何やら話し込んでいた。

「えぇ!?わ、私ですか!?」

弾けるように立ち上がって驚愕の声を上げた少女。白夢心陽は、その直後、ハッとして、両手で顔を隠す様にふわりと肩に乗った自身の髪を顔の前に寄せて座り直した。
心陽は、少し居心地が悪そうにしながら、先ほどから無表情を維持して目の前に座っている青年、藤樹を見つめなおし、再び口を開く。

「ど、どうして私なんでしょうか…?」

恐る恐ると言った口調に、樹は小さなため息を付きながら面倒臭そうに、二人の間に置かれたテーブルを指した。樹の指の先には、現代日本には似つかわしくない蝋印で閉じられた一通の封筒。

「さっきも言った通り、うちにパーティーの招待状が来て、男女ペアでの参加が求められたからキミを誘ってる。理由はまぁ、ヒマそうだから?」
「ひ、暇って!そんなことないですよ!」
「あれ?さっきは予定開いてるって言ってたよね?」
「うっ!そ、その日はたまたま予定がない日なんですよ!」

終始樹のペースで進められていく会話に、心陽は焦ったように両手をふくよかな胸の前でぶんぶんと振るが、樹は大して興味なさそうにそう。と封筒と共に置かれているカップに注がれた珈琲を啜る。そして、心陽に視線を合わせ、口元に笑みを作った。

「何でもいいけど。一緒に来てくれる?」

何とかの弱みだろうか、その言葉に心陽は頷くことしかできなかった。




*******




「それで…、どうして僕のところに招待状なんて来たのか分からないんだけど。せっかく招待されたのに、断るのも悪いかなって…あ!夢華ちゃんが嫌なら強制は出来ないんだけどね!」

困ったように乾いた笑みを浮かべたのは、左目に傷がある青年、日々川大心だ。手には蝋印で閉じられた封筒を持っており、落ち着かないと言った様子で、時折くるりと回したりしている。

「嫌ってわけじゃないけど…何で私?」

大心の隣に立つシスターの恰好をした少女、風間夢華は、心底不思議そうに自身の顔を指差し首を傾げた。
聞いた話では、結構大きなパーティーらしい。どうしてそんなところに兄を通じて知り合っただけの自分を誘ったのか、夢華は不思議でしかなかった。

「えっと、僕って女の子の友達とかってそんなにいないから…ほら、こんな見た目だしさ。それに、このパーティー男女ペアでの参加が条件みたいなんだ」
「ああ、それで…まあ、予定もないし、いいよー」
「え!あっ!?いいの!?」

思ったより軽い感じで承諾され、自分でも大げさかと思うほど驚いてしまった大心だったが、驚愕に染まった表情は徐々に気の緩んだ表情になっていく。

「大ちゃんにはこの前助けてもらったし」
「あの料理のこと…?僕、そんなに役に立たなかったけど…、でも…よかった。オッケーしてくれて」

断られてたらどうしようかと思った。などと緊張の糸が切れたのか、盛大に安堵の息を吐く大心に、夢華は少し可笑しそうに笑みを浮かべた。


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