2 カツン、カツン。一歩ずつ足を進めると、慣れない高いヒールが大理石で出来た床とぶつかり、その音が耳に入るたび心臓の音が大きくなっていく。 招待されたパーティー会場のビルに着くと、案内人と名乗る質の良さそうな燕尾服を着た初老の男性が二人の前に姿を現した。 そして、男性の後を歩きながら、心陽は隣にいる樹を見て、少し興奮したように口を開いた。 「すごいですね。私こんなところ初めて来ました…」 「そう?こういうパーティーって大体こんな感じな気がするけど」 「藤さんと私では感覚が違いすぎますよ!」 心陽が少しムキになってそう言うと、頭上でクスッと笑う声がして妙な気恥ずかしさが込み上げてきた。そんな気恥ずかしさを振り払い、心陽は視線を外し、自分たちを挟む壁を見る。豪華、とまではいかないが、気品があり壁自体が芸術品と言われても納得できそうな装飾が見ていて飽きない。 「少々お待ちください」 前を歩いていた男性は大きな扉の前で立ち止まり、心陽と樹に向かって深くお辞儀する。それにつられてお辞儀を返そうとした心陽だったが、樹にやんわりと止められた。 扉には何故か重そうな倉庫錠のような物がかかっていて、男性はポケットからその錠の鍵であろう物を取り出した。 「あの…失礼ですが、その錠は?」 不審に思った樹は、心陽を庇うように一歩前に出て鍵穴に鍵を差し込んでいる男性に声を掛ける。 「ああ、説明もなしに大変失礼いたしました。ご気分は悪いでしょうが、当家の主人は用心深い方でして…これより先には先代の遺品等もありますので、このように錠を…」 男性は本当に申し訳なさそうに、腰を折り謝罪する。 遺品があるからといって、これほどまで厳重にする必要はないのでは。とは思ったものの、前置きに用心深い人間だと言われてしまっては、どんな言葉もその言葉で返されてしまうだろう。おかしいと思いつつ、ここまで来てしまったからには引き返しにくい。 樹はそうですか、と元いた位置に戻り、男性が右ポケットに鍵を戻したのを注意深く見ていた。 ******* 錠のついた扉を超えると、そこはまるで夢の様な。テレビや漫画でしか見ない別世界が広がっていた。 「それでは私はこれで」 そう言って扉の向こうに消えた男性を見送り、大心と夢華は会場を見渡した。 高い天井には大きなシャンデリアが吊り下がり、会場を煌びやかに照らしている。目に入る人々は皆、豪華なドレスやタキシードを着こなし、優雅にシャンパンの入ったグラスを傾け談笑して、完全にこの場に馴染んでいた。 「う、うわぁ…ぼぼ僕、場違いじゃないかな…」 「だ、大丈夫なんじゃない?場違いって言うなら私もだし…」 夢華は兄であるトキヤの選んだドレスを見降ろし小さなため息を吐く。いいと断ったにもかかわらず、高そうなドレスを用意され、仕方なくと理由を付けて着て来たのはいいが、どうも服に着せられている感じが拭えない。 しかし、 「夢華ちゃんは大丈夫。似合ってるよ」 そんなネガティブな考えは大心の一言で恥じらいに変わり、夢華は思わず大心の背中に向かって思い切り平手打ちを食らわせた。平手打ちをくらった大心は状況が掴めず、何のことかも分からず謝り続けていたが、夢華の小さなありがとうという言葉に緊張も忘れて花が咲いたような笑顔を浮かべる。 「えっと、このままここにいる訳にもいかないから……行こうか」 「う、ん」 |