4 「紳士、淑女の皆々様。パーティーはお楽しみいただけているでしょうか」 カツン、と会場に響き渡った靴の音に、ほんのり暗くなった会場。入ってきた扉の正面に設置されたステージに、スポットライトを浴びた長身の男性が現れる。 男は長い前髪で右目が隠れてはいるが、とても整った容姿をしていた。つり上がった目を細め、チェシャ猫のように不気味に笑って見せても、会場にいる女性が見惚れるほど綺麗な笑顔になっていた。 「皆様、本日はご多忙のところ、わが社主催のパーティーにお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 今日が初参加という方もおいでですので、簡単ではありますが、自己紹介をさせていただきます。私は、この社の代表取締役を務めさせていただいている…黒崎、瑠亜と、申します」 瑠亜と名乗った男は言いづらそうに一瞬言葉を切ったが、また綺麗な笑みを浮かべて挨拶を続ける。 「本日は、ささやかではございますが、お食事とお酒を用意させていただきました。どうぞごゆっくりとお楽しみください。 それと、招待状にも記載したように、パーティーの後半では、この会場にいる皆様全員で行うゲームをご用意しております。どうぞ余興としてお楽しみください。 それでは、乾杯いたします。 私ども業界の発展と、皆様のますますのご盛業を祈って、」 乾杯!瑠亜の掛け声と共に、会場のあちこちでグラスを傾け合う参加者たち。 テンプレをそのまま張り付けた様な乾杯の音頭をとった瑠亜は、ステージから降り、詰めていた息を吐きだした。ステージ上で浮かべていた笑みは今は無く、サファイアの様な青い左目が会場を照らすシャンデリアをぼんやりと見つめていた。 「おい」 「っ!…なんだイルちゃんか…」 イルちゃんと呼ばれた長髪の男は、会場にいるウェイターと同じ格好をしていた。男は瑠亜の持っていたシャンパンを取り上げると、「気を抜くなよ」と一言言って長い髪を揺らして去って行く。 「ははっ……そんなこと分かってるって」 白い手袋に包まれた拳を握り、瑠亜は口元にまた笑みを浮かべ食事や談笑を楽しむヒトたちへ向かっていった。 |