もしも僕が突然、いなくなったら。

※望夜がマイナス思考、良くしゃべる。モブがいる。


「…で、透明になる薬がほしいと。」
「…はい。」

僕はとある研究室に来ている。知り合いがここの研究所のリーダーで度々話をしに足を運ぶ。
最近よく思うのだ。 自分がいなくなっても誰も気づきやしないだろうし必要ともされないだろう、と。
完全に消えてしまいたいとは思うのだが、でもやっぱり周囲の反応を知りたかったから、透明になる薬なんてないかなー、と彼に相談を持ちかけた。

「あることにはあるさ。だけど、ひとつだけ。」
「…?」
「この薬はね、それぞれ人によって効き目の長さが違うんだ。かと言っても、長くて3日ほどだがね。本当に短いときはほんの一瞬で効き目が切れてしまうんだ。それでもいいかい?」
「はい。」
物は試しだ、彼から‘‘透明になる薬‘‘を貰った。

家に帰り、早速薬を飲んでみる。
しばらくすると、自分の後ろでゴトッと鈍い音がした。

後ろを振り向くと、自分の体が倒れていた。

…え?え?!聞いてないぞそんなの!!!透明になる薬だろ?!幽体離脱するだなんて聞いていないぞ!
そっちの透明なの?!あぶなっかしい透明!!透明じゃなくて幽体離脱!!!!!!
パニックになるも、なぜか入ることもできず、自分ではどうしようもないのでとりあえず外に出ることにした。


幽体離脱したせいかドアをすり抜けたし浮遊している。未だ落ち着かないがとりあえず今の現状を飲み込むことにした。
色々と考えることを後にしよう。…苦情も、後だ。


色々と散策しているとシノノメと桔梗の姿を見つけた。
二人は談笑しながら歩いている。 …嗚呼、僕がいなくても楽しそうに。
「シノノメ、桔梗…」

触れようとしたが、触れられなかった。むしろ、触れても彼らの体に自分の腕が貫通するだけで。
…なんだか、心寂しくなった。
そんな僕に気づかず、だんだんと彼らと僕の距離が離れていく。これ以上居ても辛いだけだった。


次の日、結局透明ながらも家の中に居た。隣に横たわるのは、自分の体。
なにもすることができず、ぼんやりしていた。
すると、突然インターホンがなった。

出ることはできないが、インターホンの映像を見るとシノノメと桔梗が居た。
…少し、びっくりした。

『ありゃ?いねーのかな?』
『めっずらしーねぇ』
『なー。いつもこの時間帯はいるのにな!折角遊びに来たんだけどなー。仕方ねえ、今日はほかのやつらのところに行くか?』
『そうだねえー 仕方ないね。じゃあ、行こう!」』

出ない、じゃなくて出られない。折角の機会を逃してしまった気分だった。
最低3日はこのままだから、体が元に戻ったら一度、自分から彼らに会いに行ってみよう。



気づけば一週間もたっていた。…なのに何故だろう。体が元に戻らない。
あれからシノノメと桔梗は僕の家を訪ねることが多くなったが、まったく反応のない僕の家の異変に気づいたらしい
そんな二人を追うと、そこには僕の親戚であるシグマの家にたどり着いた。

「最近望夜のやつ、なんかおかしいんですよね…。なんか、インターホン押しても出ないんすよ」
「え?外出してるだけなんじゃないのかい?」
「わかんないんだよー!一週間も出ないんだよ?望夜はインドア派のはずでしょ?絶対どこかでいるはずなんだよ!」
「だから見てないかとか聞きにきたんですけど、なんか知らないっすか?」
「…ううん、見ていないけど。…一週間もか…あいつにしてはおかしいな。わかった。俺も一緒に探そう。」
「「はい!」」
…僕のために、皆が僕を探そうとしている。こんな僕を、心配してくれている。
なんだかとても、申し訳ない気持ちになった。

「おーい!望夜やーい!」
「望夜ー!どこだー?!」
「望夜ー! 望夜ー!」
探しても見つかるわけがない。僕は皆から見えない。僕はここだ。
「いたか?!」
「ううん…見つからないよ…」
「…そうだ、探せば望夜の合鍵があるかもしれない。ひょっとして望夜が家で倒れていたとしたら…!」
「!!」
「急ごう!一緒に探してくれないか!散らかしてくれてもかまわないから!」
「うん!!」


「どこだ…!あ…これですか?!」
「これ?!…これ、はうちの鍵だ!!」
「ややこしいなあもう!!」

皆皆、必死だった。
ごめんね。ごめんね。僕、疑ってた。

「あった!これだ!!行こう!!一秒でも早く!!」
「で、でもなんか、思ってきちゃったけど家にもいなかったらどうするの…」
「そんなことは後だ後!今は望夜の家を急ぐんだよ!!」

皆が僕の家に入り、僕を探す。
僕の体は寝室。来てくれたところで僕は助かるの?



「望夜っ!!」
シノノメが僕を見つけた。
「望夜っ!ねえ望夜ったら!!起きてよぉ…」
「望夜…!」
シノノメを桔梗が少し僕の体から離し、シグマがすかさず駆け寄ってくる。

「…冷たい」
「そ…そんな…」

何が透明になる薬だ、何が幽体離脱だ、あの薬は僕を殺してしまったのか。
皆泣いている。僕ももう、このまま戻れないんじゃないだろうか。
何より、大切な幼馴染と親戚をなかせてしまった。ここまで大事になってしまうだなんて思わなかった。
僕も泣いた。それと同時に僕の視界は真っ黒になっていった。



ふと、しばらくして意識が浮上してきた。ああ、ここひょっとして天国?なーんちゃって…
と思ったらベッドのうえ。目の前には泣いて目が腫れた三人がいて。皆驚いた顔をして。

「望夜…?望夜?!」
「起きた…?!みっ見えるか?!聞こえるか?!俺らのこと、わかる?!」
「シノノメに、桔梗に、シグマ兄さん…」
「ああ…ああ…よかった…よかったよ…!!本当によかった!!」
「もぉーっばかばか!!のえるんのばか!!いなくなっちゃったらどうしようと思ったんだからね!!!」
「ぐえ」
皆が器用に寝ている僕に抱きつく。苦しい…
死んだのかと思ったが、僕は生きて居る。皆にも必要とされている。
皆も僕も、泣き疲れているのにもかかわらず、しばらく皆と一緒にいっぱい泣いた。

皆、ありがとう。ほんとうにごめんなさい。









後日談。
また僕はあの研究所に足を運んだ。
「あの…あれ透明になる薬なわけ?透明になるどころか本気で死んだかと思ったんだけど…」
「あっはは…実は失敗してしまったほうを渡してしまったみたいだ…すまないね」
「いや笑って済む話じゃないからね。つか3日じゃなくて一週間はあんなんだったよ。」
「ははは」
「だから」
「でも、わかったんじゃないかな?君は皆に必要とされてるっていうのは。」
「…うん」
「だったらいいじゃないか?な?」
「…いいように収めようとしてるみたいだけどマジで怖かったからね。僕の中では完全に良かった話じゃないからね。
…ほんと、効果切れたからいいけど今後はこんなことないようにしてよ。」
「わかったよ」

…この人への不信感は煽ったね。











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