「えーーーー!なにがどうなって、ナマエが泥門アメフト部のマネージャーになったの!?説明して!!!」
家に帰って、ようちゃんに電話で今日のことを謝り、ついでに王城の試合を一緒に見ることはかなわなくなったことを報告した。
電話ごしでも分かるようちゃんの混乱っぷりに、ふふっと笑いそうになりながらも、ナマエはどこから話そうかと考えた。
「〜〜かくかくしかじかで、こうなったわけ」
「なるほどね〜。ヒル魔くんって人、一枚も二枚も上手だったわけだ」
「そうなんだよね。結果的に乗せられちゃったような形になったけど、セナを助けるためだから、もういいんだ」
「ふ〜ん・・・ね、そのセナって幼馴染と付き合ったりはしないの?」
「ないないない、セナはただの幼馴染!じゃあ明日朝早いからまた連絡するね、おやすみ」
考えもしなかったことにナマエは思わず目をまん丸にするが、すぐに頭を振って想像を消し去る。
(彼氏なあ・・・もしも付き合うなら、背が高くて、頭がよくて、優しくて・・・そう!あのヒル魔みたいに傍若無人じゃないような人がいいな!!)
ナマエはぼんやりとそんなことを考えながら、重くなってきた瞼をこすりつつ、明日早く起きてアメフト部に顔を出そうとベッドにもぐりこんだ。
* * *
「さてと!アメフト部の部室って確かここよね?って汚なっ・・・」
朝早起きして部室に来てみたはいいものの、扉を開けるとそこにはとても汚い空間が広がっていた。
開いているペットボトルや、アメフトのボール、防具やアメフトの雑誌など、ありとあらゆるものが部屋中に広がっている。
(これは気合いを入れて掃除するしかないな・・・まずは散らかった防具やものを片づけるところから取り掛かろうかな)
掃除をし始めて1時間も経ったころ、セナが登校してきたのか部室にやってきた。
整理整頓され、綺麗になった部室にとても驚いているのか、言葉もでないようだ。
そんなセナの様子に、少しばかり得意そうにナマエは声をかけた。
「おはようセナ!部室すごく汚れてたから掃除しちゃったんだけど、勝手にしてよかったかな?」
「いや、いいと思うよ!すごく!!」
「よね!まあダメって言われても汚れすぎだしやってたけどね・・・」
そう話していると、今度は栗田が登校してきた。
「わあ!ピカピカだ!スゴいねーーー!!!」
「「スゴいねーーーーーーーーー!?」」
「どうしたの栗田くん、そのお菓子!」
ナマエとセナが栗田の声に振り向くと、栗田は鞄も持たずに、両手や更には首にまで洋菓子店の袋を抱えていた。
ケーキのマモノール、シュークリーム雁屋、ケーキの一光堂などなど、袋の数は8袋にのぼり、どれだけ食べるんだろうと思うほどだ。
「セナくんとミョウジさんの入部祝いに買ってきたんだ!さ、みんなで食べよう!ミョウジさん、朝から部室のお掃除お疲れ様」
栗田の花が咲くような笑顔でのんびりと労われ、ナマエもそろそろ休憩しようと部室で飲もうと家から持参していた紅茶を淹れる。
一番初めに口に入れるのは、もちろんケーキのマモノールのチーズケーキタルトだ。
ナマエはこのケーキが大好きだった。
「あ〜やっぱりチーズケーキタルトはマモノールのね!しっとりしてるけど、タルト生地はサクサクで美味しい」
「しっとりとしたチーズケーキ部分、僕も好きだよ〜」
「栗田くんも?私ここのチーズケーキタルトが一番好きなんだ。クリームチーズがね・・・」
「おう、揃ってんな。ホワイトナイツ戦の説明すんぞ!」
そう栗田とナマエがケーキ談議に花を咲かせていると、当然のようにヒル魔が部室に入ってきて机を蹴り上げる。
机の上のケーキは無惨にも散らばり、机はくるんと回転してグラウンドのボードへと姿を変えた。
「ちょっと!!!ケーキをどけてからでもよかったんじゃない?」
ナマエからすれば当然の抗議だが、セナと栗田からすれば新鮮に映ったようで、慣れって怖いね・・・などと2人で話している。
ヒル魔はナマエの声など聞こえないとでもいうように、ケケケと準備を進める。
小脇に抱えていた荷物はどうやら選手のフィギュアのようだ。
ガシャガシャと音を立て、ボードの上にフィギュアを広げていく。
「模型部が徹夜で 快く 作ってくれた」
石丸やアイシールド21など、精巧に作られたそれらに、セナや栗田はすごいと手に取って眺める。
そうこうしていると、フィギュアはボードの上に陣形どおりに並べられた。
「よし、じゃあ作戦について話すぞ。こいつ、アイシールド21がボールを持って走る。以上だ」
「えーーーーーー!?」
(これだけ作らせておいて、それだけ・・・)
聞いていなかった作戦内容に、セナは焦りを隠しきれない。
「つ、次も出るの?でもさすがに全部持って走るのは、難しくないかな〜〜って・・・」
「なんでセナが怖がってるの?」
汗ダラダラでヒル魔に出来る限りの反抗を行うセナに、ナマエはきょとんとして問いかけた。
ナマエはセナがアイシールド21だということを知らないので当然の反応である。
「あの選手なら怖がったりしないと思うよ。セナも見習わなきゃね」
セナが思わずヒル魔にナマエにはバラしてもいいんじゃ・・と横目でチラリと見てみるが、絶対にダメだバラしたらやめろだのうるせえと顔に書いているため、セナは黙るしかない。
そんな2人の様子に、栗田は気にせず言葉を発した。
「全部走るって、パスもなし?3rdダウンで残り10ヤードとかでも??」
「どうせ誰も捕れやしねえだろ」
「・・・3rdダウン?」
唐突に始まった2人の本格的なアメフトの会話に、セナの頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
そんなセナに、栗田はまだ詳しい説明していなかったねと言葉を続けようとした。
「セナ、これ貸したげる。私はもう昨日大体覚えたから」
栗田の言葉を遮ったのは、ナマエだ。
家から持参したアメフトのルールブックを、セナに差し出した。
そんなナマエに、栗田やセナは驚き、ヒル魔は皮肉った。
「一夜漬けで大体覚えるだなんて立派なこって」
そうケケケと笑うヒル魔に、ナマエはムキになって言い返す。
「ちゃんと覚えました!!」
「そうか?なら、3問クイズを出す。それで1問でも間違えたら、お前は二度と俺に逆らうな。労働力として粛々と働け。」
「〜〜〜っ、ええ、いいですよ!その代わり私が全問正解したときには、もうその傍若無人な態度、やめてよね!!」
ヒル魔とナマエがこうして火花を散らしている間、セナは栗田から優しくルールを教わっていた。
「試合は攻守交代制になってて、両チーム4回攻撃することができるんだ。で、4回攻撃が終わるまでに10ヤード進むことができれば、また次攻撃することができるんだ。それができなければ、攻守交替」
「なるほど、陣地の綱引きみたいな感じですね。でもこの狭いところから、お互い進んでいるわけか・・・」
「任せて!狭いとこは、僕ら壁役のポジションが力を合わせてルートを切り開いていくから!
この辺はパワーの世界だね!!」
そう言って、ムキっと力こぶを強調させるようなポーズをとる栗田。
セナはパワーは一番苦手・・・と小さくなっている。
ナマエとヒル魔のクイズは、2問まで正解したところで無理矢理打ち切られたようだ。
筋トレ行くぞーと煙に巻くように、ヒル魔はショットガンを担いで部室を後にした。
* * *
トレーニングルームに着き、ヒル魔はさっそくベンチプレスの準備に取り掛かる。
「マネージャーはトレーナーと兼任だからな、やり方くらい覚えてろよ」
「はいはい、ちゃんと覚えます!」
当然のようにセナが説明人形のように、ベンチに寝かされてバーを持たされる。
ヒル魔は体勢を確認して、栗田とナマエに指示を出す。
「まずは20sからか?おい、糞マネージャー、バー乗せろ」
「私の名前はミョウジです!もう、セナ、重り乗せるね」
結果、セナは10s(バーのみ)、ヒル魔は75s、栗田は160sだった。
栗田に至っては、160sの重さを感じさせないかのごとく、バーを激しく上下している。
みんなすごいなあとナマエはのんびりと傍で計測用紙に書き入れていたが、セナがそんなナマエに話しかけた。
「そうだ、ナマエ姉ちゃんも試しに量ってみたら?前にちょっと鍛えてるって言ってたでしょ?」
「そんなんじゃないって。でも、久しぶりだし、やっていようかな?」
隅っこでごそごそと準備をするナマエに、ヒル魔は目敏く目を付けた。
「糞マネージャー、お前もやんのか?」
「もう!ちゃんと呼んでってば。私も久しぶりに量ってみたいからやるだけ。気にしないで」
「ナマエ姉ちゃん大丈夫?何sからやる?」
「40s。セナお願いね」
そうして40sのベンチプレスを容易に上げたナマエに、ヒル魔はこっそりとポケットから脅迫手帳を取り出すのであった。
(コイツ、今まで何かやってたのか?うまくやれば選手として使える・・・か?)
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