砂の城
「よりによってハロウィンの渋谷へ急な呼び出しとは大変ですねえ……」
「ええ、本当に。帳まで降りていて大事になってますので時間もかかると思います。今日中に帰れる確証もありませんし、気にせず先に寝ていてください」
「了解です。帰る間もなく明日の朝そのまま出勤になりそうだったら、連絡入れてくださいね」
「はい。ああ、ナマエさん、戸締りはしっかりしてくださいよ」
「建人さん、私のこと小さい子どもだと思ってます?」
「いえ、大切な相手を心配してるだけです。そもそもアナタは前科があるでしょう」
「ぐうの音も出ない……。しっかり戸締りさせていただきます」
「結構。それでは」
「あ、待ってください!」
「はい?」
「忘れ物です!」
「何か……?」
「私への行ってきますのキスを忘れてますよ!」
「……普段してないでしょう。恥ずかし気もなくよく言えますね……」
「たまにはいいじゃないですか! ……ダメ、でしょうか?」
「……」
「え〜、どうしておでこなんですか?」
「口にすると仕事に行きたくなくなるので。続きは帰ってからにします」
「宣言されると緊張しますね……」
「今更何を言ってるんですか」
「あはは、結婚したって好きな人のアプローチにはドキドキするものですよ。それじゃ、私は良い子に待ってますから、お仕事いってらっしゃい! 気を付けてくださいね」
「はい。行ってきます」
2018年 10月31日 19:42
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