38話 命の誕生と、そして。

38話 命の誕生と、そして。


僕が正社員になって、しばらくした12月。

それは、雷が鳴り響く、大雨の日だった。

『泪が破水しました!!』

拓也さんから春樹さんに連絡が入り、ちょうどクリスマスで2人とも休みだった僕達は急いで泪さんが運ばれた産婦人科病院へ。

僕達が到着する頃には泪さんも、そして付き添いで拓也さんも分娩室に入ってて、待合室には灰さん家族がいた。

「ちょうど予定日に来たねぇ」

「めっちゃ遅れたお前よりいい子だなー?」

「あうー??」

灰さんの第1子は結構予定日より遅れて生まれてきたらしい。
ぷにぷに頬を続く父にぽかんとしてから楽しそうな顔をした、なずなちゃん。

可愛い。

僕も、春樹との子供を育てたくなる。
大人の勝手な行為を憎んで生きてきた僕の思考とは思えないけど、父や母に愛されて楽しそうななずなちゃんを見て、僕も親になってみたくなった。
大人のエゴかもしれない、僕はまだ未熟なのに、と葛藤する。

そして、数分後。

「おぎゃあおぎゃあおぎゃあ!!」

元気な赤ちゃんの産声が聞こえてきて、僕は春樹と抱き合って喜んだ。

拓也さんと泪さんの第1子は元気な男の子だった。

「さあ、名前決めてもらうよ?」

「「責任重大!!」」

「素敵なお名前お願いしますね」

ある程度落ち着いて病室に戻った泪さんは疲れが見えながらも楽しそうに笑う。
隣に寄り添う拓也さんも穏やかに笑う。
僕達は必死に知恵を絞る。

その時、ゴロゴロ、ピカッ!!と大きな雷が鳴る。

「びぎゃぁぁぁあ!!」

「よしよし、泣かないでー、なずなー」

なずなちゃんがその大きな音に驚いて泣き叫ぶ。

「『雷(らい)』とかは?雷(かみなり)って書いて、ライ」

「泪さんの名前と似た感じでいいね」

「いいですね」

「うん、よし、決定」

「「「軽っ」」」

あまりに軽い決定に僕達は驚愕する。
泪さんは、「だって春樹さんが考えてくれた名前だし」と満足げに笑った。

「でもうちの子泣かせるとはいい度胸してんな」

「いや兄貴、なずなちゃん泣かせたのただのカミナリだからね??」

それから、«ジェミニ»のメンバーや、秋斗さん、雅さんも到着して、雷くんは沢山の人に誕生を祝福される。

生命の誕生ってすごい。

こんなにも、沢山の人を幸せに出来るのか。

……僕の誕生は、望まれていなかった。でも、母さんに、少しでも愛されていたなら。

僕は少し気持ちが軽くなった。

その夜。

「雷くん、可愛かったな!」

「だね。すごいね。女の人って」

「崇めよ」

「ははぁー!」

そんな冗談をしながら、春樹がいつもと違う感じがした。
なんか、吹っ切れたような、清々しい顔。

「……洵、結婚、しよっか」

「ふふ。吹っ切れたの?」

「うん。私も、お前との子供を抱きたくなった。大人のエゴかもしれない、勝手かもしれないけど、私も、暖かい家庭作りたい。……洵と」

「うん。幸せにするね」

「うん。愛してる」

僕達は、お互いしかいらない。

過去を憎んだもの同士惹かれて、お互いに足りないものを埋めあって、僕達は変わっていった。

あんなに生きることを諦めていた僕は、前向きに、春樹だけを愛して、世界に感謝して、生きるようになった。

春樹は、何もかもを1人で抱え込んで、1人で生きていこうと自分を偽ってた。
でも、だんだん、女性らしい服も自発的に着るようになって、僕に甘えるようになる。

僕達はお互いに溺れながら、生きていく。



「病める時も健やかなる時も……」

神父が僕達に永遠の愛を問う。
タキシードに着替えた僕と、純白のウエディングドレスに身を包んだ春樹はそれぞれ「誓います」と答え、永遠の愛を誓い、誓いの口付けを交わす。

多いとは言えない、身内のみの参列者に沢山の拍手と祝福を貰い、僕達は永遠の愛を誓った。

これからも、貴方をずっと愛すよ。
貴方だけをずっと愛す。


ずっと、ずっと、貴方に溺れると、誓います。



ー第1章ENDー