秋斗と雅の子供ー弟 藤ー
秋斗と雅の子供ー弟 藤ー
僕と兄さんは父さんが3人いる。
血の繋がった実の父と、育ての親の秋斗さんと雅さん、その3人が、僕達の大切な、尊敬する父さん。
実の父は僕が8歳の時に交通事故で死んでしまった。
その時一緒に乗ってた母も、2人とも即死だったらしい。
悲しかったから何日も泣いて暮らしたけど、僕には優しい大好きな兄さんがいたから耐えられた。
そして、雅さんの作った切なくも温かく情熱的な音楽があったから、生きてこられた。
秋斗さんが弾くギターと、彼の双子のお姉さんであるボーカリストさんの苦しくも救いがある歌を聞いて、僕達は生きていた。
そして、両親が亡くなって約2年後、僕達と2人は出会う。
僕達の里親になった秋斗さんと雅さん……父さんとお父さんは、とても優しくて、お父さんは売れっ子作曲家なのに、父さんと休みが被ると僕達を色んなとこに連れて行ってくれた。
水族館や、動物園や、遊園地、映画館、美術館、博物館……。ショッピングモールにはよく4人で買い物に行く。
僕達はそんな父さん達が大好きで、尊敬している。
僕は、昔からピアノが弾けたから、お父さんがピアノを弾かない時はピアノ室に入り浸った。
「あれ?またピアノ弾いてたの?藤」
「うん。僕ピアノ好きやから」
「そっか。いいよね、ピアノって」
お父さんは「何弾いてるの?」と譜面台の楽譜を覗く。そして、ちょっと驚いてからまた優しく笑う。
今、僕が練習してるのはお父さんが作った曲だった。
「この曲ちょっと難しい」
「どこ??」
「ここなんだけど……」
僕が楽譜のある部分を指差すと、お父さんは「ああ、ここな」と小さく言って、弾いて見せてくれる。
やっぱり自分で作った曲なだけあってすんなり弾いてしまう。
そして、「ここは……」と丁寧に解説してくれる。
その説明はとても分かりやすくて、的確で、何回か試してみると、上手く弾けるようになった。
「お父さんはいつからピアノやってるん?」
「俺?俺は3歳からしてたよ。親が教育バカでね。でも音楽は学習に必要ないって気づいたのか小6で辞めさせられたけどね」
「辞めさせられたのによく続けられたね?」
「学校で勉強するっていいながら音楽室に入り浸ってたから」
ふふ。とお父さんは色気のある笑い方をして、思わずドキリとしてしまう。
父さんは男らしい色気だけど、お父さんはなんか違う色気があるんだよな。
女性的なのかな?
いや、おかまっぽいって言う意味じゃないけど。
「藤は好きなことしていいからね」
「うん、ありがとう、お父さん」
「まあ、他人を傷つけるようなことはしないでね?」
「ふふ、うん」
でも、その後すぐに、僕はクラスメイトを殴ってしまう。
「なあ、お前の親ってゲイなんやろ?」
「……だったら?」
夏休み明け。
いつも僕に食ってかかってくるクラスメイトが、ニヤニヤしながら僕にそう言う。
何が気に食わないんだろう。
別に異性カップルだけが正しい親になれる訳じゃない。
父さんの両親は父さん達を虐待していたらしい。
そして、ある日、殺された。
だから、僕は異性カップルだけが正しいなんて、思わない。
「キモくない??男同士でチュッチュッしてんやろ??うぇ、気持ち悪っ」
「そんなこと言うお前が気持ち悪いよ」
「あ??」
クラスメイトは顔を屈辱で真っ赤にする。
そして僕の胸ぐらを掴む。
「ゲイなんてキモイもんおらんくなればええんや」
ーガッ!!
僕はカッとなってクラスメイトを殴り飛ばす。
「いってぇ!!なにすんねや!!」
「父さんらを悪く言うなや!!あの人らは優しくてええ人らや!!異性カップルだけが正しいなんて間違っとる!!」
「はあ?!なんなん!?あ、わかった!!お前も男が好きなんやろ!?うっわ、きも!!えんがちょ〜!!」
ゲラゲラ下品に笑うクラスメイトが憎らしくなって僕はまたクラスメイトに掴みかかりボコボコの殴り合いになる。
それに恐怖を感じた別のクラスメイトが先生を呼んできて、僕達は引き離されるけど、非難されたのは僕だった。
「ゲイカップルの子供は教育がなってない」
なんで、どうして??
なんで2人の愛は『異常』だなんて言われるの?
なんで、どうして……。2人はお互いが大切で、好きで、一緒にいたくて……。
異性カップルと何ら変わらないのに。
なんでなんや……。
殴られたクラスメイトの家に父さんと謝りに行くと、やっぱり言われた。
「気持ち悪い家庭ね」
その時の父さんの悲しそうな顔を僕は忘れない。
帰り、父さんは僕の手を繋ぐ。
「ごめんな」
「!!なんで?!なんで父さんが謝るん?!」
「やっぱりオレ達は望んじゃいけなかったんだ」
「そんな……」
僕は立ち止まって、父さんを引き止める。
父さんは僕に引っ張られ「おっと?」と不思議そうな顔をした。
「藤??」
「僕は2人が間違えとるなんて思わん!!せやから僕が政治家になって、世界変えたる!!」
僕の「政治家目指します」宣言に、父さんは、ポカン……としてから、ぶわははは!!と豪快に笑った。
「な、なんで笑うん。僕本気や」
「いや、悪ぃ悪ぃ。……ありがとな。お前ら引き取ってよかったわ」
父さんは穏やかに笑う。
そして、僕の頭を優しく撫でた。
「僕も、僕達も今幸せだからね?」
「ん。サンキュ」
そして月日は流れ、大人になると僕はこの宣言通り政治家になり、LGBTに対する偏見を無くす様々な運動をするようになる。
そんな僕に父さん達は「自慢の息子だ」と、微笑んでくれた。
父さん、お父さん、2人ともずっと大好きだよ。
ーENDー