洵と春樹の長男、冬樹の恋

洵と春樹の長男、冬樹の恋


俺はずっと叶わない恋をしていた。

物心ついた頃からの恋の相手は父の従兄弟で、俺よりも27歳くらい上だった。

しかも、生涯一緒にいると誓いあったパートナーがいて。

そして、なにより。

彼は男だった。

でも、俺は何か男とは違う色気の放つそのお兄さんに小さい頃からゾッコンだった。


「みやびしゃん!!」

ーぎゅぅっ

俺が4歳の頃の話。
その年の夏は俺達家族が、雅さんとそのパートナーの秋斗さんと、訳あって彼らの元で暮らす2人のお兄さん(萩さんと藤さん)が暮らす大阪に遊びに来ていた。

団欒の夜。
広いリビングの一角でワイワイ話をしていた時。
俺は雅さんに後ろから抱きつく。

「おっ、どうしたー?」

「おれね、大きくなったらみやびしゃんをおよめしゃんにする!!」

ーブフォッ!!

冷たい麦茶を飲んでのほほんとしていた大人たちは勢いよくそれを吹き出す。

「ちょ、ちょちょちょ、冬樹!!」

「あっははははは!!お前マジか!!」

お前何言ってるんだ!と、父さんはめちゃくちゃ慌ててたけど、母さんは目に涙を溜めてめちゃくちゃ大爆笑してた。

萩さんや藤さんも声を殺して笑っていて。

小さい俺はなんで皆がこんな反応なのか分からなかった。

「えー、なんでみんなわらってるの??」

「あー、えーっと、冬樹、それはー、ちょっと出来ないかな」

「えー!!なんでー!!!……わぁっ?!」

雅さんにまた深く抱きつこうとした時。
首根っこを捕まれ彼から離される。
俺の首根っこを掴んだのは、雅さんのパートナーの秋斗さんで。

「だーめーだ!!雅は俺と結婚してんの!!」

「やだやだやだやだー!!おれもみやびしゃんとけっこんするー!!!」

「父さんって男にモテるんやな」

「あはははは……」

駄々を捏ねて数分後。
俺は雅さんにあやされて、抱っこされてたまま眠りに落ちる。

なんて幸せ。

でも、わかってた。
あの人はパートナーがなにより大切なんだ。


あれから月日は流れて、中2になったが、俺は彼女のかの字も作らない。
母さんはまだか?と茶化すが、父さんは焦らなくていいと俺を諭す。

告白は割とされる。
でも、そんな気分にならなかった。

「あの!!冬樹くん!!付き合ってください!!」

「あー、ごめん。洵菜くらいのいい女になってから出直して」

双子の妹の洵菜は中2になって、めちゃくちゃいい女になったと思う。

圧倒的に母親の遺伝子が強い俺とは対称的に、圧倒的に父親の遺伝子の強い、大人しく優しい女だった。

まあ、口喧嘩では勝てないけど。

スタイルも顔も性格もいい、ただ唯一の同世代の女が、妹の洵菜。
こう言われた相手は直ぐに戦意喪失する。

洵菜はそれくらいのいい女だったし、相手もその程度ってわけだ。

「不愉快」

「何が?」

ある日、洵菜が渋い顔をして俺の部屋に乱入してくる。
俺の家は、子供部屋が各自1人1部屋ある。

「また、私の名前使って告白断ったでしょ」

「いーじゃん別に。お前だって同じだろうが」

「う"っ」

洵菜も割とよく告白されて、その度に「冬樹よりいい男になってから出直して」と言っているらしい。

洵菜に振られた友人(仮)にそう言われたのがつい1ヶ月前。

「……だって。私は冬樹がいればいいもの」

「はいはい。そーね」

「ちょっと、ちゃんと聞きなさいよ」

なんとなく洵菜のそれが、兄である俺に向ける感情では無いことに俺は気づいていた。
洵菜は、俺が好きなんだと思う。

『男』として、俺を愛しているんだと思う。

でも、俺は、あの人がよかった。

叶わなくてもいいから、想ってたかった。

女なんていらなかった。


でも、


俺は運命と出会う。

「けーいとさん!!」

「うわぁっ?!ちょっと冬!!マジ街中で抱き着くのヤメロって何回言えば」

「はいはい、行くよー!!」

「だー!!手を繋ぐなバカタレ!!」

ゲイで未成年と付き合う犯罪者とか知れ渡ったら……とぶつくさ言いながら俺に手を引かれているこの人は、玖木慶人(けいと)さん。

父さんの従兄弟で、俺の初恋の人、雅さんの19歳下の弟。

雅さんを辞めて慶人さんに妥協した訳じゃない。

ただ、この人の隣は居心地がよかった。


ーENDー