1 -悪夢
「……大丈夫」
そう自分に言い聞かせるのは何度目だろうか。
鳴り響く銃声と、男性の低い怒声。
怖くて怖くて、ベッドの横でうずくまって涙を流すのみだった。
数分前。
私は部屋で読書をし、のんびりと休日を謳歌していた。のに。銃声が聞こえ始め、下の階からは叫び声。
怖くて何も出来ないのだ。
「おい、こいつがあの令嬢か?」
「この豪華な服…間違いねえな」
「!?」
いつの間に。
そう思えるほど一瞬、私の部屋の窓から男性が二人侵入していたのだ。
息がうまく出来ない。
「パスワードを吐け。」
「お前の父親のパソコンのパスワードだよ。知ってるだろ?」
私のお父様は大手企業の社長で、パソコンの中にあるデータは大変貴重なものだと言っていたのを思い出す。
それでも、私はパソコンのパスワードなんて、聞いたことがない。
「し、知らない……」
「はぁ? 何か心当たりあるだろ?一発くらいたいのか?」
男がそう言うと、胸元から拳銃を取り出して私に向けた。
「……っ!? 」
「早く言わねえと、下の階にいるお前の使用人共も消すぞ」
初めて拳銃をこの目で見て、そして近距離で突きつけられ、生理的な涙があふれる。
誰でもいいから、助けて。目を強く瞑ったその瞬間、男の呻き声が聞こえた。
願いが届いたのだろうか。
「遅くなってごめんな」
窓から、軽やかに男二人に飛び蹴りをかましながらその男は私に笑いかけた。
「もう、大丈夫だ」
赤く揺れるネクタイが、正義のヒーローみたいで、
初めて会う人なのに何故か懐かしいような気がして、
とてつもなく安心してしまった。
そこで、私の意識は途切れた。
- 1 -
*前次#
ページ:
書架