yosomi


また明日





「今日から3日間は安静にしていて下さいね、お薬も出しますので様子を見ましょう。もし何か異常があるようならすぐにお越しになって下さい」

「ありがとう。いやー、夏目先生の治療、早くて的確で助かったよ!若いのに凄いね、相当経験積んだんだろう?」

「いえいえ、そんなこと。まだまだ勉強中の身ですから」

「またまたぁ!そんなこと言って。この病院で一二を争う敏腕医療忍者だって噂流れてるよお?」

「噂は噂ですよ。私よりもほら、この病院は秋間先生が重鎮として回っていますから」

「でも秋間先生はさ、基本的に一般病棟に付きっきりだろう?忍相手にも治療が出来ちゃう夏目先生のが、俺は凄いと思うけどなあ」

「んもー、そんなに褒めても何も出ませんよっ!傷だってよくなりませんっ!」

「あはは!そりゃそうだなぁ。いやでも本当にさ、噂は噂だと思ってたのよ俺も。でも今日治療を実際に受けて確信に変わったんだよ」

だから自信持ってこれからも頑張んなよと、本日最後の57人目になる患者さんは言った。小さな頃から医療忍術に興味があった私は、今ではこの木の葉病院に勤めている。
ちゃんとアカデミーにも通って忍としての基本も学んだ。その頃の世界は大戦時代ということもあったし、有難いことにそれなりに才能のある身体に生まれたらしく、早い段階で中忍にもなった。飛び級で中忍になることは今ではとっても珍しい事と言われている。でも私はそれなりの方で、もっと凄い人たちがいるのを私は知ってる。
医療忍術について学びながら過ごした時代や、幼少期に重なった大戦時は本当に大変な日々を過ごした。でも何とか生き抜いた。その後もこの国を守る為に忍として働き、目まぐるしく日々は過ぎた。沢山の経験をして、沢山怪我もしたし沢山の思い出もできた。切磋琢磨する仲間もいた。大切にしてくれる先輩にも恵まれて、火影様にもとてもお世話になった。その日々が無ければ今私はここにいない。うん、分かってる。それは私が1番、痛いほどに分かってる。

でも、私がこの先忍として任務に就く事は、もう無い。



「んじゃあ先生、今日はどうもありがとう」

「はい、お大事になさって下さいね。ちゃんと薬のむ事!」

「はーい、また来るねー!」

「来ない努力をしてください!!」



ケラケラ笑いながら去っていく背中を見送り背もたれに寄りかかり、窓の外を見つめる。



「もうこんな時間かぁ」



気が付けば空は赤く染まっていた。
グッと伸びをしてから窓辺に立つ。
気持ちの良い風が吹き抜け、髪を乱していく。



−−−−−−−−−−コンコン



外を眺めていると、聞こえたノック音。
新しい患者さんだろうか。いや、でももうカルテは手元にないし。あ、さっきの患者さんが戻ってきたのだろうか。忘れ物?


「はい、どうぞ」

「やあ、お疲れ様」

「!秋間先生!」

「突然すまないね、今大丈夫?」

「はい、ついさっき最後の患者さんの手当てが終わって。気付いたらこんな時間でした」

「そうか、今日もまた沢山の人が来たみたいだね…」


そう言って机にある山積みのカルテを覗き込む。ああ、まだ資料の整理が追いついていないんだった。


「最近は毎日このくらいですね。でも、幸いな事に皆さん軽傷の方が多いので。だからこそ数が増えてしまうのもありますが…重症の方が少ないというのは良いことです」

「ん、確かにそうだね。でも、君の身体に負担がかかってしまうのではないか心配だよ。ちゃんと休んでいるのかい?」

「はい、お休みもしっかりもらってます。秋間先生はーーーーーあ、すみません…」


やっぱり咄嗟に出てしまう。今までの癖が。二人でいる時は、なるべく名前で読んで欲しいとついこの間言われたばかりなのに。
でももう良い加減に慣れないと。だってもう、あの日から一ヶ月も経つんだーーーー


「いや、良いんだよ。無理しないで。まだ仕事中なのに押しかけてしまった僕も悪いんだ。だんだんと慣れてくれたら良いよ、スミレ」

「ーーっ、はい。ありがとうございます」

「ははは、その敬語も、どうにかなったら良いんだけどね。ま、それを望むのはまだ早いかなぁ」

「うっ、、が、頑張ります!」

「ん、ゆっくりね。ところで…明日のご予定は?」



本題を忘れるところだった!と言う秋間先生。 



「明日は演習場での勤務になっているのですが、夕刻までの予定です。…何かありましたか?」

「お、それならよかった。そしたら明日、夜ご飯でもどう?僕も夕刻までには終わるスケジュールなんだ。最近忙しかっただろう。美味しいご飯でもと思って…」

「え、行きます!もちろん行きます!」

「ははは、そんな反応されると逆に照れちゃうな。君のそーゆー素直なところ、やっぱり素敵だよね」

「あ、ありがとうございます」

「ん、僕の前では、そのまんまを見せて良いんだからね、気負わないこと」

「はい」

「あ、もう戻らなきゃ!カナメの目を盗んでコッソリ抜けてきちゃったんだよね」


カナメさんと言うのは秋間先生の秘書みたいなお付きの人で、良く仕事を抜け出してフラフラする秋間先生に病院長が見かねて監視役を付けたのだった。それがカナメさん。怒るとすっごく怖いらしい。
カナメにまた怒られる〜と言い時計を見ながら焦る秋間先生。そんなリスクを負ってまで、棟を跨いで来てくれるのが、嬉しかった。



「わざわざ、ありがとうございました」

「ん、少し気晴らしもしたかったし、何より君の顔が見たかったんだ」

恥ずかしがる素振りもなく、ドストレートにそう言って微笑む。あー、ずるい。この人は本当にずるい人なのだ。まったく、敵わない。

そして去り際、窓辺に立つ私の前に来て、頬にキスを落とす。



「ははは、顔が赤いよ?」

「ゆ、夕陽のせいですっ」


触れられた頬から顔全体に熱が広がる。
ああ、これが、恋人同士。



「じゃあね、スミレ」







また






(おい!やっぱり夏目先生の腕は確かだったよ!)
(え、行ったんですかーいいなぁ俺も怪我しようかなあー)
(ちゃんと俺は任務で怪我したんだからな?誤解するなよ?そんなことより俺で100人目とか言ってたぞ)
(ひ、100…?!)
(オメェみてえなやつが増えてるのかねぇ、ありゃあもたねぇよ)
(怪我、当分しないよーにしよう…)
((よし、ライバル-1っと…))



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憧れだった、あの人のとなり






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