月ノ姫



月ノ姫

その日は起きた瞬間から体調が悪かった
まず、腹部の痛みと貧血による眩暈
紛うことなき生理痛だ

正直、訓練を休みたかったが、以前ハンジ分隊長が生理痛で休むと言ったら、リヴァイ兵長に甘えるなとバッサリ切り捨てられていた

あれは気の毒だった
一応、リヴァイ班に所属している以上、リヴァイ兵長には逆らえないし、逆らおうとも思わない
とりあえず白湯を飲んでお腹を温めてから訓練に向かった

「おはようございます、リヴァイ兵長」
「あぁ、名前、顔色悪くねぇか?」
「気のせいですよ。元気です」

訓練が始まり、さっそく体調悪いのがバレた
とりあえず誤魔化してみたが、兵長は騙されてくれただろうか
気合と根性で元気なふりをして今日を乗り切らなければ

午前中の訓練を終え、昼食になったが、体調は悪くなるばかりだった

「名前、時間ごとに顔色悪くなるけど、大丈夫?」
「生理2日目で正直しんどい。貧血がヤバい」

仲良しのペトラとそんな会話をしながらお昼を食べる
午後からは立体機動装置の訓練だが、こなせる自信がなかった

心のオアシスだった休憩が終わり、訓練に戻る
立体機動装置を付け、対巨人を想定した訓練で限界を迎え、巨木から落ちたと同時に気を失った

次に私が見たのは自室の天井だ
気付けば立体機動装置が外され、布団と毛布がかけられていた
とりあえず起き上がる

「起きたか、名前」
「兵長?兵長が運んで下さったんですか?」
「あぁ、お前随分軽いけど、メシ食ってるか?」

はぁ、まぁ、と曖昧な返事をする
生理痛で訓練中倒れたなんて知られたら絶対怒られる

「名前、具合悪ぃなら言え。心配するだろうが」
「その、兵長が生理痛は甘えだと仰ってたので、言えませんでした。お手数おかけして申し訳ありません」
「なんだ、生理か。病気じゃねぇんだな?」
「?。はい生理2日目です」

次の瞬間、ふわりと兵長に抱きしめられる

「病気かと思ったじゃねぇか」
「は?え?兵長?」
「具合悪いなら言え。本気で体調悪い奴に訓練させるほど鬼じゃねぇ」

いや、でも、ハンジ分隊長は?、とは聞けなかった
とりあえず兵長意外と体温高いなー、とぼんやり抱きしめられていた

「あのー?何で私は兵長に抱きしめられてるんでしょう?」
「俺が名前を好きだからだ。嫌か?」

その一言で私はパニックになる
兵長が私を好き?
そんな馬鹿な
いやでも、そう聞こえた

「へっ、兵長は私が好きなんですか?」
「今言ったろうが。好きだ。だからあまり心配かけるな」
「はい、あの、私も兵長が好きです。だから、迷惑になりたくなくて言えませんでした。すみません」

そこまで言うと兵長に唇を重ねられる
そのままぬるりと舌が侵入し、私の口を蹂躙する
少し乱暴なキスだったが、キスって気持ちいいんだと思わされた

「今日はこんなもんにしといてやる。紅茶淹れてやるから飲め。温めておいた方がいいだろ?」
「はい、ありがとうございます」

たぶん、紅茶を飲む前から私の顔や体は熱かったが、大人しく紅茶を淹れてもらう
熱々の紅茶を冷ましていたら兵長が私を真っ直ぐ見て言った

「生理終わったら抱くから覚悟しておけ。あと、今日は寝てろ」

ニヤリと笑う兵長を見て色気を感じ、はい、と返事をして横になった
こんなに生理が早く終わって欲しいと思ったのは初めてだった

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