「えーっと……こっち、かな……?」
私は真司さんにもらった簡単な地図を頼りに、花鶏に向かっていた。
しかし、簡単な地図のためかたどり着きそうにない。
「アリス、道はあってるかい?」
「合ってるはずなんだけどねぇ……。」
そういいながら、私はうろうろと歩き続けた。
猫はつまらなくなってしまったのか、かばんの中から声を出さなくなった。
それを放っておいたまま、とにかく地図の場所を探し続けた。
「ぁ……此処……かな?」
少しお腹が空き始めた頃に、花鶏の看板が見えた。
私は一つため息をつき、その店の前に立った。
中々入る気になれず、オロオロしてると後ろから肩を叩かれた。
「!?」
「ぁ……ご、めん……君、昨日の……?」
「ぁ……城戸、さん……?」
かばんが、微かに揺れるのを感じた。
……チェシャ猫…何してんだろ……。
気にしつつも、私は真司さんを見上げた。
「また何かあった!?」
心配するように、真司さんは私を見ていた。
「ぁ、違います!……えっと……昨日の御礼を言いに……。」
「御礼って……そんな……、」
戸惑ったように、真司さんは頬を掻いた。
「ぁ……迷惑でした……?」
「!?そ、そうじゃないから!」
慌てたように手を振る真司さんを見ていると、いきなり私の後ろにあった扉が急に開いた。
「きゃぁ!?」
「ぁ!……おい!蓮!」
扉に弾かれるように、私は横にこけてしまった。
リュックが地面に打ち付けられる。
(チェシャ猫……!)
扉を開けた人物より、中の猫が潰れたりしていないかが気掛かりで、リュックを開けた。
中で、チェシャ猫はあのニヤニヤ顔のまま見上げていた。
一息つき、顔をあげる。
扉を開けたらしい、黒い服装の男性が不機嫌そうな顔で立っている。
その人に、真司さんはものすごく怒っているみたいで、私に「ごめん」というと黒服の男性を引っ張って裏の方へ行ってしまった。
「……はぁ……。」
ため息を着くと、とりあえず立ち上がった。
すると、開かれていた扉の向こうから髪の短い女の人がこっちを見ていた。
「いらっしゃいませ、二名様ですか?」
二名?不思議そうに後ろを振り向くと、知らないうちに雪乃が立っていた。
「雪乃……?」
「……。」
雪乃は微笑んで、私の手を取ると店の中へと引っ張っていった。