翌朝。パンのお粥を持ってルーナの部屋へやって来ると、中からマリアの声がした。争うというより、諭そうと叱る声だったのでノックをして返事を待つ。
「ど、どうぞ……!」
「殿下!ルーナ様ってば、全部自分で用意するからってお仕事させてくれないんです!」
「私なんかのお世話はしなくても…」
「ふふ…マリア、では私の部屋の整備でもお願いするよ。ルーナとは話したい事があるから」
マリアは若くしっかり者だが、どうにもお節介な所がある。とても世話焼きで私の事も赤ちゃんかなにかだと思っている節がある。頼もしいので、何も言わないけど。
「さて…。体の具合はどうですか?」
「はい……随分回復、」
「嘘。朝食もまだでしょう?パン粥を持って来ました。さ、食べてください」
「えっ…、あの、自分で…!」
やはり、この子が悪女には見えない。数々の浮名を流したのであれば、あーん、くらい当然のように受け入れると思ったけど、耳まで真っ赤にしてこんな初心で可愛い反応をされるとは思わなかった。
「毒味が必要ですか?」
「違っ…、」
「ん…、うん、おいしい。さあ、ルーナも」
「ぁ……」
ここで関節キスですね、なんて言おうもんなら卒倒してしまうかも知れない。決まり、この子は悪女なんかじゃない。可愛い。以上。
「おいしい、です」
「良かった」
その後もルーナは順調に食べ進め、完食、とまでは行かなかったけれどある程度の量を食べることが出来た。このまましばらくは安静にするのが良いだろう。
「あの…国王様にご挨拶を…」
「……恐らく会いませんよ、王は私を駒としか見ていません。恐らく貴女も、かの国の令嬢を受け入れてやったと、恩売に成功したとふんぞりがえってるでしょうし」
「殿下…、言い過ぎです!」
「挨拶はいりません。それよりも、私は貴女をあの男に会わせたくありませんから…」
あいつの事だ、ルーナの噂を鵜呑みにし、この美貌と併せて目にすれば、間違いなく手篭めにしようとする。これまでの、兄上の妃殿下と同じように。だから絶対に会わせない。