「?!」
休憩時間中に、突然音信不通だった元カレのランスさんから、連絡が来た。どうやら、体調が優れないから助けて欲しいとのことだ。私は、彼に対してまだ未練があった。だから、彼が私を頼ってくれて嬉しかったと同時に、私のことを振ったのはランスさんなのにどうしようかと迷いが生じた。とりあえず、上司に相談しようと思った。彼女は年下だが、年の割に肝が据わっていて、頼りになるからだ。
「主任、どうしましょう?元カレが、体調崩したみたいで助けを求めてきたんですけど…」
「#名前#さんのこと、振った男やろ?ほっときいやぁ!」
と彼女はいつものようにはっきりと言った。
「でも…彼、普段は健康で丈夫すぎるから、体調崩した時の対処法がわからないんだと思います。」
「でも、自分から振った癖にその神経、ほんま何様やねん。なんで、そんなやつのために、#名前#ちゃんが、面倒みたらなあかんねん。都合のいい女かよ…頼れる身内おらんかったら、自分の直属の上司を頼ればええやん…」
「それもそうですけど…」
「そんなやつにも親切にするところは、#名前#ちゃんの良いところなんやけどな。」
「えぇ…どうしましょう?…」
「今、携帯触っていいから、元カレと連絡とり!ほんで病院行けって言い!」
「わかりました。ありがとうございます。」
上司に背中を押され、私はランスさんに電話をかけた。
「もしもし、ランスさん?#名前#です。大丈夫ですか?」
「自分でもよくわからないのですよ…」
「とりあえず病院に行ってください。」
「私は、ロケット団の幹部ランスですよ…自分は病院には行けない立場の人間だから、無理です。だから…。」
「わかりました…また、連絡します。」
と私は、電話を切った。
「どうやった?」
「自分は病院には行けない立場の人間だから、無理ですって言われました。なので、私、仕事終わったら、彼の所に行きます!」
「病院には行けへん立場ってなんやねん!犯罪者かなんかかよ、後は私がやっとくさかい、今すぐ行ってきい!」
「わかりました、ありがとうございます。」
犯罪者かよって、上司に突っ込まれた時は内心焦った。何故なら、彼はポケモンマフィアのロケット団の幹部だからだ。上司に仕事を引き渡した。私は、冷えピタや体温計などといった看病に必要な物を用意して元カレの所へ向かった。
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「ランスさん、#名前#です。大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないですよ…自分でもよくわからなくて…」
「ランスさんは、元気すぎて無茶しすぎなのですよ…」
と私は、ランスさんの額に冷えピタをはり、直ちに彼の熱を測った。案の定、38℃の熱があった。
「…返せる言葉がありません…」
「と、兎に角、体調不良とはいえ、食べなきゃ駄目だから何か用意しますね。」
「わかりました…。」
私は、お粥を彼に作りにキッチンへ向かった。
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「お粥作っておいたので、食べてくださいね。じゃあ、私は帰りますね。」
「傍にいてください…」
とランスさんは、私の腕を掴んだ。
「え…ランスさん…?」
「私から振っておいて…ですよね?忘れてください。帰りなさい…」
と彼は私の腕を離した。彼は、天邪鬼だから、混乱した私に彼なりに気を遣ったのだろう。何よりも私を頼ってくれて嬉しかったし、万が一、私が彼の側を離れて彼に何かあったら大惨事だ。何より弱った彼が愛おしい。あわよくば、私なしで生きていけなくなれと思った。
「いえ、帰りません。お側にいさせてください。」
「ありがとうございます…」
私は、彼の体調が良くなるまで、彼の看病をした。数日後、彼の体調が治った。
「今日まで無理を言って貴女を引き留めました。ありがとうございます。もう、大丈夫です。帰りなさい。」
と彼は、何食わぬ顔をして私にお金を渡してきた。私は、お金をもらい彼の言う通りその場を後にした。数日後、ランスさんのことが心配した私は、彼に連絡をした。が、メールの返事も来ないし、電話をかけても繋がらなかった。看病を最後に、私達の関係は本当に幕を閉じた。上司が言ったように、私は、ランスさんにとって、所詮都合の良い女だった。