肆
ほんと、最低だ。
身勝手な理由で私の気持ちを決め付けて、勝手に忘れようとして。
再会したらやっぱり忘れられなかったから、結婚してくれなんて、酷い話じゃないか。
でも、真摯に気持ちを伝えてくれていた貴方に応えようとしなかった私も、同じくらい自分勝手で最低だ。
傷付きたくないからって、勝手に最悪の結果だけを想像して、貴方の気持ちに向き合わなかった。
ちゃんと私を見ていてくれたのに。
「自分勝手な貴方には、同じくらい自分勝手な私がお似合いかもね」
彼の胸に顔を埋めて、そう言い放ってみる。
何様だと自分でも思ったが、彼はそんなこと気にも留めてないみたいだ。
「そ、それって、結婚してくれるってこと……?」
期待しかしていない緩んだ顔で彼は私の顔を覗き込んでくる。
しかし、口を噤んだままの私に痺れを切らした彼は、幾分強い力で私の頬を挟み上に引き上げると、意地の悪そうな顔で言う。
「ねえ?京子ちゃん。
ちゃんと君の言葉で聞きたいな」
その顔は狡い。
仕返しとばかりに、私は彼の唇に軽く接吻して言ってやった。
「不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします、善逸さん」
「……っっ!京子ちゃん!!可愛すぎる!!!」
茹で蛸のように真っ赤な顔だった私は、何とも格好の付かない様だった。
ぎゅうと苦しいくらい抱き締めた後、彼は私の手を握り、「婚約しました」と私の両親を始め、町中に言いふらしに回った。
それが恥ずかし過ぎて「もうやめて!」と怒った私に対して、「いいじゃんー!もう恥ずかしがり屋さんなんだからー!」と反省の姿勢が全く見られない彼。
何を言っても「恥ずかしがり屋さん」の一言で済ますので、暫くの間口を利かないようにしてみた。
しかし、彼は思わず引いてしまう程の泣き様を晒してきたので、つい許してしまった私は何だかんだ言って甘いと思う。
「京子ちゃん、京子ちゃん。
何人子供が欲しい?」
「何言ってんの、気が早い」
「いでっ」
こんな彼との日常は、とても幸せだ。