数えきれないほど
そんな恋を、もうずっと続けている、君と。
◇ 運命の春 ◇
君の存在は、芽吹きのように、僕を揺り起こす。ぼんやりと前だけを向いていた僕の、肩を後ろからつかみ、乱暴に振り向かせる。
その一瞬はいつも忘れられない――頬にあたる風、朝日によく似た君の瞳――全てが、僕のなかへ飛び込んでくる。
あぁ、もう春なのだ。また恋に出会うのだろうと、僕は心の準備をする。
僕は、土から生まれてきた、冬の子どもだ。冬が好きなわけではないけれど、春の異質さに戸惑うのだった。
「君は、どこから生まれてきたの」
「……どういう意味だ」
僕に触れ、肌を芽吹かせるその腕が異質だ。どこかから来て、凍りついたものを融かしていく。
「謎かけもいいが、イヴァン、あまり時間がないぞ」
君は、笑いながら言う。
――ふたりで、数えきれないくらい葬った。引き裂いては、湖に沈めて。幾度とない別れを経験した。
子どもが冬に守られて、安寧の眠りを得たと思っても。異質な者が、凍りついた地面を殺し、少し乱暴な芽吹きを連れてくる。
雪が融けたら、あたたかいものが、まるで涙のようにあふれてくる。
「切ないね」
「そんなに惚けた顔で言われてもな」
「だって、幸せだから」
春は、いつか孤独に還る子どもたちへの、とびきり素敵な贈り物だ。
春は短いお祝いだから、ひざしがとびきり優しいのだと思う。
うれしい。サヨナラが、少しだけ怖い。
頬にふれる唇、羽ばたきのような君の瞳、全てが、きらきらと光る。今にも飛び立ちそうに、軽やかだった。
――君は僕の、運命の春。
* * *
※『恋を埋葬する』の、続きのような。誕生日をお祝いしたかったのですが、あまり祝う雰囲気ではなく、すみません。
※「運命の相手と、いえるのではないか」恋を…の後書きで語ったことを、もう一度考えてみました。
私は、春は傍若無人なやつだと、毎年同じことを感じます。新芽が地面を突き破るのも、いきなり膨らんで花が咲くのも、なんだか少し乱暴です。美しくて、優しい季節なのですが。
やっとやっと、待ち望んだものが来た、と。いつまでも
そういう幸せ≠フ感情をイヴァンさんにあげたいです。
2017.4/18 初出 うこ