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そんなある日、テニス部の皆と帰った。
いつもの様に海で遊んでたら、木手が傍に来た。

「ぬーがや?」

傍に居るのに何も話さないから聞いてみれば、いつも以上にその視線は俺を見下していて、その表情の通り君は馬鹿ですか、と貶された。

「はぁ?」

いきなり何だと思って、思わず口に出る。

「君は、彼女の笑顔を見るんじゃなかったんですか」

そう言われて、最近の俺のことを言っているのだと気付いた。
でも、俺は答えられなかった。

だって、金城が。
…金城が言ったから。

そんな保身的な事ばかりが頭に浮かぶ。
あまりのやるせなさに、俯いて、手を固く握りしめた。

「一度決めたなら、最後までやり通しなさいよ。
君は、テニス部の副部長でしょう」

足元にあった影が増える。
何かと思って顔を上げたら、皆が居てそれぞれに笑ってた。
木手は、しかめ面だったけど。

でも、その表情を見たら、もう少し自分らしいことをしてから諦めたっていいんじゃないかと思った。

「っしゃ!」

自分の頬を叩いて気合いを入れる。
そして、俺は駆け出した。

待ってろ、金城!

家の傍で、金城の姿を探す。
そんな簡単に見つかる訳ないと解っていても、金城が普段どこに居るかも解らない俺はこのあたりを探すしかなかった。

「くそっ」

額の汗を拭って、俺はまた駆け出した。

なぁ、金城。
今まで俺、自分の事、強いと思ってた。

でも、本当はお前より弱いと思うんだ。
だって、仲間に背中を押されなきゃ、俺は何も出来ないから。

お前は、違うだろ?
誰も居なくても、自分自身で意志を固めるんだ。
俺はそんな金城が、強いと思う。
とても、強いと思うんだ。

だから。
俺から、世界から逃げないでくれ。

今決めた。
今誓う。
俺は、最後までお前と一緒に居るから。



みんなと一緒にいた海とは、別の海岸で、俺は金城を見つけた。

「金城っ!!」

声を振り絞って呼ぶと、金城は振り返った。
きっといつもの冷たい金城だ。
だから俺は金城に一歩一歩近付きながら、話し掛ける。

「本当ぬ金城や、泣き虫ぬ金城やし?
聞こえるなら聞いてほしいさぁ。
聞こえないなら、後でやーが伝えといて。
だぁかわんぬとっくる来るようにして」

金城の1メートル前で止まって、深呼吸。
金城の肩が強張ったのが解った。

「わん、やーがしちゅんさぁ。
やーぬちらには泣いたちらよりも、われーぢらぬ方が似合うとうむう。
やくとぅ、わんぬ傍で笑ってて。
どんな金城も、わんや受け入れる」

だから。

「わんぬ傍んかい、居て」

君が笑ってくれたら幸せだと、気付いたんだ。