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その後、女性陣はベンチに座りながらお喋りを。
男性陣はシングルスや即席ダブルスをしていた。
今は永四郎さん慧さんペアと、知弥さん浩一君ペア。
もう一つのコートで、凛さんと裕次郎さんが対戦している。
寛さんは女性陣とお喋り中だ。
「寛君んかいや、感謝しちょるんさー」
裕次郎さんの彼女さんの言葉に、寛さんが驚く。
「ぬーが?」
「中学ぬ全国大会ぬ後、あにひゃー凛君と二人で腐ってたあんに?」
「あー……まぁな。
わったー、全員少しは腐ってたさー」
「やしが、あぬ二人をまた引っ張り出してくれたさー。
やくとぅ、にふぇー、寛君」
照れた様子で笑う寛さんに、あたしは心の中で納得した。
どんな事があったは解らないけど、中学の大会の時に腐っちゃってたから、凛さんはその話をしたくないんだ。
図らずも理由を知ってしまって、少し申し訳ない気分になる。
でも、詳しくは知らないから、私からも話すことがなければ大丈夫だろうと一人納得した。
「ひな、危ない!!」
凛さんの必死な声が聞こえて、振り返ったとき。
黒いものが見えた気がした。
「…え?」
何が起きたのか解らなくて、間の抜けた声をだす。
「わ、ひなちゃん、寛君大丈夫?」
「裕次郎、危ないんやしが!」
「わー、わっさん!」
「知念君、お手柄ですね」
たくさんの声が聞こえて、でも未だに理解が追い付かない。
「寛さん、ぬーが…?」
「裕次郎ぬ打ったボールが、やーんかい当たりそうになっただけさー」
どうやら、それを寛さんが助けてくれたみたいだ。
「に、にふぇーでーびる、寛さん…」
どういたしまして、と笑う寛さんはいつも通りで、あたしはどっと力が抜けた。
「凛、ちょっと休憩!」
裕次郎さんの言葉に小さく頷いた凛さんが、歩いて戻ってくる。
目が合ったとき、凛さんが疲れたように笑った。
「大丈夫だったか?」
隣に座った凛さんに問われて、私は頷いた。
寛さんのお陰でボールには触れもしなかった。
「やしが、当たってたらってうむうと怖いですねー」
皆さん全国区プレイヤーということもあってボールの威力は半端じゃない。
痣ですんだら運がいい方だろう。
「やさ。
でーじびびったーっ!」
頭を抱えてうずくまる。
「裕次郎ぬ奴、後で死なす!」
「あはは、だぁまであびらなくても…。
悪気があった訳じゃないんですから」
「…悪気があってたまるかよ」
凛さんがぼそっと呟いて、ふと顔を上げる。
目があった。
少しふてたような表情をした彼はくしゃりと表情を歪める。
「無事でよかった」
凛さんは私の頬に触れて、そう、微笑んだ。
その後、お店に戻って皆さんと色々な話をした。
夜には寛さんや浩一君の彼女さんも来て大盛り上がりしたのだった。