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観光客の最も多い夏のその日、突然のスコールに打たれて、私はずぶ濡れのままお店に入った。

「めんそーれ…って、ずぶ濡れやさ…」

凛さんに言われて苦笑で返した。
普段は折り畳み傘を持ち歩くようにしてるけど、忘れた日に限ってだ。

「クーラー寒い?」

そう聞かれて、曖昧に頷く。

「やしが、他ぬお客さんとかや暑いあんに?
大丈夫やいびん」

濡れた服をタオルで拭きながら答える。

「風邪引くんどー?」
「なんくるないさー」

心配顔な凛さんにそう返せば、凛さんは溜め息を付いた。

「うり」

急に手を引かれて、何かと思ったら裏に連れてかれる。

「あいっ、凛さん!?」

いいから、と言われて、私は大人しく着いていった。

裏には二部屋くらいあって、その片方に入った。
どうやら休憩室となっているらしく、凛さんは棚を一つ開けて服を出した。

「くり、わんぬやしが」

そのまま差し出されて、私はえっと声を零した。

「うぬままでいるよりマシあんに?
くまーで着替えてゆたさんから。
…わん廊下出ちょるさー」

凛さんは颯爽と部屋から出てしまって、私は立ち尽くした。
でも、折角のご厚意を無碍にも出来なくて私はお言葉に甘えることにした。

上は素直に着替えさせてもらって、下は悩んだけど渡されたし着替えることにした。
髪もあげて、服が濡れないようにする。

やっぱり、細くても男の人なんだな、なんて服を着て実感する。
心音が速まったのを誤魔化すように、凛さんに声を掛けた。

「凛さん、着替えましたー」
「おー」

声の後に凛さんは中に入ってきた。

「にふぇーでーびる、凛さん。
助かりました」

何故か顔を赤くした凛さんが、おう、と笑った。






普段は週に一度通う島宝だけど、私は次の日、また島宝に顔を出した。

「はいたいー」

店内には少しのお客さんと、寛さんがいた。

「めんそーれ、珍しいやー?」
「昨日、服借りたので返しんかい来たんです。
凛さんや?」
「遅刻」

苦笑付きの寛さんの言葉に、思わず私も苦笑した。

「凛さんやよく遅刻するんですか?」
「…いや、裕次郎ぬ方が多いさー」

料理を注文してから聞いてみると、寛さんは少し考えてから呟いた。

「あ、そうなんですねー」
「まぁ、なまじゃ誰も気にしないんやしが…」
「あはは、そんなむぬやいびん」
「だーるなー」

寛さんが笑ったとき、勢いよく扉が開かれた。
何かと思って振り返れば、凛さんが肩で息をして立っていた。
目が合って、凛さんの目が見開かれる。

「凛さん、はいたい」
「はいさい、遅刻魔ー!」
「かしまさい!」

裕次郎さんの言葉に噛みついてから、汗を拭いながら凛さんが傍に来た。

「ひな、珍しいやー」

寛さんと同じ事を聞かれて、同じように返した。
そのまま服の入った紙袋を差し出して、頭を下げる。

「お陰で風邪もひきませんでした。
にふぇーでーひる、凛さん」

凛さんはふっと笑って、私の頭をぽんぽんと叩いた。

「おー」

いつものように呟く凛さんの声に、私も笑った。