15
引っ越しも終えて、十二月も終える頃。
何の因果か、いつも行く曜日が二十四日だった。
その日、努めていつも通りに島宝へ向かうと、去年のようにクリスマスの飾り付けがされていた。
「めんそーれ、ひな」
凛さん、裕次郎さん、寛さんに言われて、こんばんは、と返す。
窓から見える公園のツリーは綺麗に輝いていた。
「一年、やさ?」
「ですねー」
凛さんの呟きに、くすくすと笑って返す。
「ちゅーやぬーかめーってくんばぁ?」
「寛さんぬオススメで」
「なら、クリスマススペシャルさー」
カウンターの向こうで寛さんが笑った。
肉か魚か野菜かも解らないメニューに期待して、私も笑った。
いつも通りお酒まで飲んでから、私は席を立った。
「けーるんばぁ?」
「うー」
裕次郎さんの問いにお会計を済ませながら頷く。
残念ながら明日も仕事だ。
社会人にはクリスマスもイブも関係はない。
「りーん、ひなちゃんけーるって!」
裕次郎さんが声を張ると、後ろに居た凛さんが顔を出した。
「じゅんに?」
「けーるやいびん」
「ちょっと出てくるさー」
寛さんにそう言って、凛さんは店の外に出た。
その後ろを追うように、私も店を後にした。
「少しゆたさん?」
凛さんに問われて、頷く。
夜も遅く閑散とした公園のツリーの前に凛さんと並んだ。
ツリーを前に話も動きもしなくなった凛さんの顔を覗き込む。
「…凛さん?」
凛さんは気まずそうに眉根を寄せた。
「んー…」
聞き取るのがやっとの声で唸る。
どうしたんだろう、と思っていると、急に温かさに包まれた。
「あいっ?」
一瞬何が起きたのか解らなかった。
でも、次の瞬間には抱き締められたのだと気付いて一気に体温が上がったようだった。
「しちゅん」
耳元で呟かれて、何がなんだか解らなくなる。
片手を頬に添えられて、頬にキスをされて。
「…りん、さん?」
名前を呟くのがやっとだった。
「わんぬくとぅ少しずつでいいから見て。
もし、付き合ってくれるなら、ずっと大事んかいする」
一生懸命言葉を伝えようとしてくれてるのが解って、泣きそうになる。
それを必死に堪えていると、凛さんの腕が離れた。
「ちゅーや告白だけ。
返事やいつでもゆたさん。
ゆっくり待つさー」
凛さんの笑顔に、心が高鳴る。
「じゃあ、わん店戻るさー。
気をつけてけーるんばぁよ!」
背を向けて歩き出す凛さん。
その背に、彼に聞こえないくらいの声で呟いた。
「凛さん、」
メリークリスマス。
きっと答えはすぐそこに。
そして、今日も扉を開ければ。
「めんそーれ!」
取って置きの笑顔が待っている。