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CMが開けると、ひなはもう舞台に上がっていた。
貯金箱を渡したりしながら、ちょっとしたトーク。
司会に頼まれて、ひなは沖縄方言を話した。
わっと沸く場内に、ひなの笑顔に、心臓がぎゅっと掴まれるようだった。
少しして、一度CMが入った。
それが終わると、司会が真面目な表情で言う。
「では、これからひなさんの過去を見つめてみましょう」
その後、ひなのアップが映ってからVTRに変わった。
映されたアップにあったのは緊張か、恐れか。
今のひなの瞳には何が映ってるんだろう。
流されたVTRには俺のよく知っているひなの過去が描かれていた。
それなりに可愛い子役がひなの役を演じてる。
唯、何の為か、幼馴染みとしての俺の存在は、はっきりと映し出される事は無かった。
幼馴染みで、仲の良いテニス部の男子として、俺は出ていた。
騒いでる二人のテニス部員。
物静かな一人のテニス部員。
暴食してる一人のテニス部員。
そして、騒いでるテニス部員をゴーヤで脅し、叱り、呆れてる部長。
名前が出ることは当然ながら無いものの、何人かの特徴はよく出ているVTRだった。
それほどにひなが俺たちの性格や関係を知っていたという事だろう。
別れのシーンでは、俺との別れよりも、クラスの友達の方がはっきり描かれていた。
ひなは、俺に何を伝えたいんだろう。
考えても、少しも解らなかった。
本当に、俺たちの距離は遠くなってしまったんだと、悲しくも実感する。
こんな現実、俺は見たくなかったのに。
なのに、見ることを止めることは出来ない。
海の向こうで、ひなが頑張ってる。
だから、俺も頑張らなくちゃ。
その後は、ひなが上京した後の話だった。
俺の知らない話ばかりが続く。
いくつかの俺の知ってる事実は良いことばかりで、辛かったこと苦しかったことは、俺は一切知らなかった。
あぁ、俺の知らないところで、ひなはずっと苦労してたんだなぁ、って思ったり。
当時はよく電話していたのに、俺は気付いてもやれなかったんだなぁ、って思った。
俺は、彼女の…、ひなの感情の違いすら気付いてやれなかったのかよ。
そう思うと、無性に悔しくなった。
なんだ。
俺、彼氏失格じゃね?
きっと、ひなも愛想をつかしてる。
俺のことなんて、とっくにどうでもいいんだろうな。
気付けば握りしめた拳を開いてみたら、手のひらにくっきりと爪のあとが残っていた。
VTRが終わると、またひなのアップが映った。
「ということで、以上がひなちゃんのVTRでしたが……。
ひなちゃん」
「はい、何でしょう?」
司会の言葉に、ひなが問う。
「今年のテーマは“出会いと別れ”なのは知ってるよね?
VTRだとそれが余り感じなかったけど…」
確かに。
今年のテーマに沿わないVTRだった気がする。
少しの出会いと、友達との別れ。
せいぜいそんなもので、企画が立ち上がる程じゃない。
「言ったらカットされちゃうかと思いまして」
そう言って笑うひな。
あぁ、お前は何を言うつもりなんだろうな。
俺は、何を聞けばいい?
「?
えっと……じゃあ、別れてしまった人に手紙と歌を書いて貰ってるので、そちらに参りましょう。
ひなちゃん、お願いします!」
司会は一瞬の間の後に、気を持ち直したのか番組を進行させる。
「はい」
瞬きを二回して、ひなはへらっと笑った。
泣きそうなのを堪えてる表情だ。
頑張れ、ひな。
ここでちゃんと、聞いてるから。
ここから応援することしか、出来ないけど。
お前を見てるから。