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入院した翌日、私は無事退院した。
その日の夕方には研にぃから連絡が来ていて、松田さんとの約束の段取りをつけてくれた。
十一月の末。
研にぃに違和感を持たれないように、私はいつも通りの服を選ぶ。
大学卒業に向けて、少しずつ服を入れ替えていこう、と若い服ばかりが並ぶワードローブを見て苦笑した。
二十二歳当時、元の世界でも着ていたような服を好むあたりがなかなか面白い。
「ひなちゃん、こっち」
よく研にぃと勉強していたポアロで待ち合わせをした。
研にぃと並んでいるくせ毛にサングラスの男性が松田さんだ。
「研にぃ、忙しいのにありがとう」
「ひなちゃんの頼みならね」
頭をぽんぽんと撫でてくれるのは四年前から変わらない。
「これ、警察学校時代の同期」
「二度めましてですね。
同僚さんかと思ったら、研にぃからよく聞いてた同期さんだって聞いて気になってたんです。
よろしくお願いします」
「おぅ、よろしくな」
二人が子供の頃の話や、警察学校での出来事を聞いていて、本当に生きてるんだな、なんてわかっていることを思う。
「なんか、二人の話聞いてると怪しそうな証言がいくつかあるんだけど…」
精神年齢はともかく、実年齢は同じということで言葉は早々に崩した。
「えぇー、俺たち信用なし?」
研にぃの言葉には遠慮なく頷く。
「他の皆さんの話も聞いてみたいなぁ。
なんか、伊達さんと諸伏さんが一番公平そう」
降谷さんはカウントしない。
頭に血が上ると公平じゃなくなるのは原作軸でわかってる。
二人は目を合わせてあー、と呟く。
「班長なら連絡着くだろ」
「だね。
諸伏ちゃんと降谷ちゃんは…返事くれねぇんだよな…」
理由はわかる。
わかるけど、当たり前だが私から言えることではない。
少ししんみりした雰囲気を払拭するべくえ、とわざとすっとぼけた声を出す。
「ふたり、嫌われてるの?」
「んなワケあるか!」
ばーか、という小学生レベルの悪態付きで松田さんに言われてあはは、と笑う。
「信用してるんだね」
「っち」
今度は恥ずかしいのは視線を逸らす。
松田さんってわかりやすいなぁ、と心中笑う。
いや、普通に微笑んでた。
「もし、連絡着くようになったら…会ってみたいな」
「そうだねぇ…。
連絡取れたら、きっとね」
そのあと、松田さんは煙草を買いに、研にぃがお手洗いに立った。
テーブルの上に置かれたままの研にぃの携帯を拝借して、以前盗み見たパスワードを開く。
研にぃがガラケーでよかった。
ガラケーのパスワードなら単純で把握出来る。
目当てのひとを探してメールを打つ。
相手は降谷零と諸伏景光だ。
「あしおと。」
二人に一斉送信をして、送信BOXからメールは削除する。
コップに入ってる水をわざとテーブルに零して、あたかも携帯を慌てて持ち上げたように、携帯も、そして実際に濡れているテーブルも拭いた。
拭いている間に研にぃが戻ってきた。
「どしたの、ひなちゃん」
首を傾げた彼に、水零しちゃった、と告げる。
「ギリ濡れてないから」
と椅子に座った彼に直接携帯を渡す。
「水没したら弁償だなぁ」
と言われたから大丈夫だよ!と慌てて言った。
あはは、と笑いながら彼は少し携帯を操作して、問題ないと判断したのか画面をこちらに見せてくる。
何かと思って覗くと、中には五人の写真があった。
「え、研にぃ若いね!」
「いや、若いって!
これひなちゃんに会うちょっと前だけど!?」
「あははは、冗談冗談。
ねぇ、その写真ほしいなー」
そう言うと彼は、しょうがないなぁ、と息を付きながら、メールでその写真をくれた。