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四年前の今日、彼女は俺の前に現れた。
本当だったらいなかったはずの彼女。
住民は避難させたはずなのに、と慌ててその腕を引いて歩くと、足が縺れたのか彼女は派手に転んだ。
抱きかかえるようにして途中まで下りて、俺が怪我をした後は自分の足で一階まで下りてもらった。
その後、ひと悶着あったが俺と彼女は無事病院に向かった。
俺自身は足のケガだけで済んだ。
ひとまず爆発物処理班に戻ったが、一か月もしないうちに時折しびれが出るようになってしまったため、前線から離脱することになった。
総務として働くことになったが、爆発物などの設計図やバイク等の修理等、時折いろんなところに呼び出されるいわゆる何でも屋状態だった。
総務一本だったら辞めていたかもしれない。
そう考えると、この力を少しでも試せる場所にいられるのはありがたい話だった。
二城ひな。
ひなちゃんと呼ぶようになった彼女は、あの事件のあと定期的に会うが、不思議な目をした子だった。
彼女が事件当日の昼過ぎに脳死の判定を受けており、今現在所謂記憶喪失になっているということだった。
彼女の迷子のような目がなんとなく忘れられず、事件以降も彼女と話をするようになった。
あの子は、きっと俺を生かすために生き返ってくれたのだ。
ならば、俺があの子の為に動かないで一体誰が動くというのだろう。
意識ははっきりしているのに、焦点が定まらないというか、“ここにいない”、そんな雰囲気を全身から沸き立たせる子。
高卒認定、大学受験とできるだけ彼女のサポートをするようになったのは、当時幼馴染の陣平ちゃんと同僚たちに散々言われたことを自分自身も自覚しているからだ。
「お前は彼女に助けられた」
俺は、ひなちゃんに助けられた。
ひなちゃんが居なかったら防護服もまじめに着ていなかった俺はあそこで爆破直撃で死んでいただろう。
故に、陣平ちゃんにだけは告げていた。
「彼女は、俺の神様だから」
そんな神様な彼女は七年間眠り続けた影響なのか、同い年なのに子供と話している印象を受ける。
彼女も年上と話している印象なのだろう、俺のことを研にぃと呼ぶ。
神様を大切だと思っても、恋愛対象にならなかったのは、それが原因かもしれない。