6



数日後、未だひなには言えないでいた。
直接会っていいたい、そう思ってたから、どんどん遅れていく。

来週、会えそうだな。

ひなの予定を聞いてそう思う。



「ゆい、ゆい!」

家でぼうっとしていたら、裕次郎君が家に入ってくる。

「めんそーれ、どうしたんばぁ?」

裕次郎君はにっと笑ってから、鞄の中をあさって一枚の紙と何冊かの冊子を取り出す。

「って、裕次郎君……くり」
「婚姻届貰ってきた!
あと式場ぬパンフレット!」

なんてテンポの早いこと。
私は呆気にとられていた。

「で、どうする!
ゆいっ!」

でも、そんな風ににっこり笑う裕次郎君を見たら、もう付き合ってからの時間とか世間体なんてどうでもいいかな、なんて思って。

「わん、海が見てるところでやりたい!」

笑って応えた。






裕次郎くんとのそんな会話から一週間。
ひなと久しぶりに会う。
なんだかんだすれ違ってたなぁ、なんて思う。

「ひな!」

待ち合わせは海岸。
ひなの姿が見えて、私は片手を挙げて呼んだ。
ひなはふわりと笑って、駆け寄る。

「久しぶり!」
「やさ!
取り敢えず、どっか入るんどー」

私が言うと、ひなは頷いた。



近くの喫茶店に入って、お互い飲み物とケーキのセットを頼む。
やっぱりこんなのが楽しめるのは女の子の特権だと思う。

「で、会って話したいくとぅってなんなんばぁ?」

真っ先にひなに聞かれて、私は苦笑する。

「あぬね、」

そう呟きながら、フォークをお皿に置く。

「結婚するくとぅんかいなったさぁ」
「………あぃっ?」

一瞬の間のあとに、ひなが呟く。

「やくとぅ、わん、結婚するんばぁよ!」
「た、たーが?
相手は!」

二度目を言ってから、ひなは目を見開いて問う。
だから私は、ひなも知ってる人だよ、と言った。

「あぃっ……。
えー?」

ひなのリアクションを数分楽しんでから、私は呟く。

「あぬね、甲斐君なの。
裕次郎君と、結婚するんばぁよ」

ひなはまた目を見張ってから、ふわりと笑った。

「おめでと、ゆい」

ありがとう、そう笑ってから、私はフォークを手にした。






次の日、裕次郎君が遊びに来るから、私は夕飯の材料を買いに出た。
単純な日々が、一瞬で色づいた。
全ては裕次郎君と再会したその日から。

そうだ、帰ったら、中学のアルバムを開こう。
裕次郎君と一緒に見て、思出話をしよう。

実は、アルバムの中に1枚だけ一緒に写ってる写真がある。
…勿論、集合写真を除いて。

裕次郎君は、それに気付いてるかな。
私はそれを見た瞬間に、狂喜したんだけど。

その写真を撮ったときの、私の想いをもう一度聞いてもらおう。
そして、これからアルバムを開く度に、ずっと話すの。
いつか生まれた子供にも。

私の想いが嘘でないことを知ってもらうために。
どれだけ裕次郎君が輝いているのかを知ってもらうために。



「ゆい」

帰り道、裕次郎君に声をかけられる。

「荷物持つさぁ」
「にふぇでーびる、裕次郎君!」

そして、空いた手のひらを握って帰る。
その温かさが、幸せを教えてくれる。

いつまでもこうして生きていきたい。
貴方と一緒に。



ずっと、ずっと。

うんじゅとまじゅん。