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今日は、何故だかいつもの様な飲み屋じゃ無かった。
この地域で、お洒落なことで有名なお店。
てっきり飲むだけだと思っていた私は、正直ビビっていた。
「わっさん、ちゃんとあびっとけばよかったな」
困ったような表情の甲斐君に謝られて、私は慌てて首を振る。
「ううん、大丈夫やさ。
ちゅーぬくとぅ、でーじ楽しみだったんばぁよ。
まーでも、嬉しいさぁ」
「そ、そうあびってくれると、わんも誘ってよかったさぁ」
甲斐君も慌ててそう笑った。
私たちは一瞬目を合わせた後に、二人で声を揃えて笑った。
らしくない緊張も無くなり、私たちは和気あいあいと食事を始める。
お互いに、この空白の時間に何があったのかを話ながら進める食事はとても美味しいし、楽しかった。
デザートまで食べてから、会話が止まる。
お互い、明日も仕事。
長くはこうしていられないのが寂しかった。
「やぁ、うっぴぃーねぇ、海んかい行かねぇ?」
甲斐君がそう言ったから、私は笑って頷いた。
「喜んで!」
そう、まだ帰るなんて早いの。
だって、まだ言ってない。
言ってないんだよ、貴方が好きだって。
少し長い道のりを案内されて歩いていると、中学高校と、よく行ってた海だった。
「わったーがよく来た海やっし」
「あり、甲斐君も?
わんも、よく来たんばぁよ」
「じゅんに?
ぬーんちあぬ頃、会わなかったんだろうな!」
「ね!
不思議さぁ」
クスクスと笑いながら、砂浜を歩く。
もう随分遅い時間のせいか、周りには誰も居ない。
私はふっと海を見つめてから、甲斐君に笑いかける。
「あぬね、甲斐君。
ちゅー、話そうとうむた事があるんばぁよ」
「わんに?」
「うん」
自分を指さして言う甲斐君に、私は頷く。
「聞いてくれますか」
私は甲斐君が頷いたのを確認してから、すっと息を肺に詰め込む。
「憧れてたんばぁよ」
初めに出た言葉は、自分でも吃驚した。
「中学ぬ頃、ひっちー皆ぬ中心んかい居たうんじゅに、憧れてたんさぁ。
ずっと、うんじゅを見てた。
うんじゅがわんぬ、生活ぬ中心んかい居たんばぁよ。
うぬ憧れては最近まで続いてた。
やしが、」
初めは憧れてただけかもしれないけど。
唯の勘違いだったのかもしれないけど。
「なまは、うんじゅが、でーじしちゅん!」
何よりも、誰よりも。
「甲斐君が、しちゅんやいびん」
貴方を見て生きてきました。
怖いけど、笑顔で言えた。
だって、真実だったから。
ずっと甲斐君を見て生きてきたのは本当のことだったから。
甲斐君は目を見張ってた。
驚かせちゃった。
少しした後、はっと息を飲んだ甲斐君。
甲斐君は一瞬悩んだあと、動き出した。
甲斐君が動いた瞬間、私は視界は真っ黒になった。
「甲斐、君?」
「じゅんにっ?」
震えてる、甲斐君の声。
その声が頭のすぐ上から聞こえたから、私は彼に抱き締められているのだと気付いた。
私は、抱き締められて動きづらい体を小さく動かして、こくりと、頷く。
「にふぇーでーびる。
わんも、しちゅんやっし。
具志堅ぬくとぅ、世界でいちまんかなさそん!」
甲斐君の言葉に、暖かなものが頬を伝う。
溢れる温かいこの気持ち。
なんて満たされるんだろう。
本当に?
そんな一瞬の疑心すらも、この体を抱き締める腕が現実だと訴えていて。
あぁ。
カミサマ。
これを幸せと、人は言うのですね。