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目を覚ますと、知らない部屋だった。
確か、観覧車を止めようとするキュラソーをクレーン車からどうにか引っ張り出して、そこで意識を失った。
ということは、ライに引き続き私はまた手柄を逃したのか。
恐らくキュラソーの身柄は日本警察の手の内だろう。
私も、一緒に捕まったのだろうか。

そう思って痛む体で辺りを見渡すとガラリとした空間が広がっていた。
ここは警察ではないかもしれない。
色の着いたカーテンが見える。
傍にはギター。

窓とは別に扉がひとつある。
私がいた部屋は明かりはついていないが、向こうの部屋は明かりがついているようで、光が差し込んでいた。
まるで、私にはここがお似合いとでも言うように。
決してあの光に手が届くはずもないとでも言うように、私の体は動かない。
首一つ動かすだけで痛みが響く。

このまま死ぬのだろうか。
死ぬ前に、あのフォルダを誰かに託さなければ、今までの私の存在は意味を成さないだろう。

そんなことを思っていると、いとも簡単に扉は開いた。
明かりの中にいたのはバーボンだった。
いつもと変わらない表情で、いつもと違うラフな格好。

「え…」

思わず呟くと、不機嫌そうに彼は微笑む。

「僕の家です」

いきなり場所の説明が来た。
彼は何か言いたいのだろうか。

「キュラソーの身柄は結局日本警察に持っていかれましたが…」

ちっ、と舌打ちするのは珍しいと思った。
仲間を殺そうとした挙句にキュラソー奪還も裏切り者のキュラソーを殺すこともできなかった私に対する当てつけだろうか。
ただ、私も同意見だ。
自分の手で始末をつけたかったのに。
最近は大きなネズミを逃してばかりだった。
小物なんて大した結果に繋がらないというのに。

「ねぇ、バァボン。
私、死ぬくらい怪我酷い?」
「そのくらいで死んでたらこの世は死人だらけですよ」

そこまでではないらしい。
ならばいいか、と一瞬思ったが、早々に思い直す。

またいつこんな事態に陥るのかわからないのだ。
早めにあのフォルダを託せる相手を選定しなければ。
私はやることリストのトップに項目を追加した。