双子の誕生の段

いつの間にか意識を手放していた‘‘私”は、どこを見渡しても暗闇で温かい水の中にいた。
この人肌のような生暖かい温度と濡れても気持ち悪くないような不思議な感じ。
そして何より体を動かそうとしても自分の意志に反してまったく体が動かなかった。

まるで何かに閉じ込められて身動きが取れないようなそんな感覚。
音もない光もない薄暗い闇に包みこまれているこの世界は不気味だった。

自分が今までいた真っ白な世界とはまるで「真逆の世界」。

何がどうなっているんだろうか?
自分は今まで病院にいたはず……意識を手放したということは眠ってしまったのだろうか?

色々な思考が頭の中でぐるぐると回っている最中突然足を引っ張られる強い引力に身体が身を任せるようにして引き釣り出される。

なになにっ?!何が起きているの!?

ぐいぐいと強いけど体に痛みを感じないほどの強さ加減に驚きながらも体は一筋の光を目指して引っ張られていく。

眩しい!!ここは、一体どこなの!?おぎゃー!おぎゃーっ

暗闇から抜け出してみるといきなりの眩しい光に思わず目を閉じて思っていることを口に出した…はずだったのだが、その声が聞こえず
すべてが赤ん坊の声に聞こえた


「おめでとうございます!元気な赤ん坊ですよ」

穏やかそうなおばあちゃんが温かい布にくるんで私に向かってほほ笑んだ。
仮にも「10歳」の僕を軽々と抱き上げるなんて見かけによらず力持ちのおばちゃんだなと思っていると隣でもう一人の男性が横になっている女性に励ましの声をかける

「もう少しだ、あともう一人でたぞ!!」

「おぎゃー!おぎゃー!」

男性がお腹から出てきたもう一人の赤ん坊を抱き上げる。
ホッと胸をなでおろし女性に向かって言う

「よく頑張ったな、元気な男の子だ」
「こっちも元気な男の子よ」

おばちゃんとおじさんが私たちをみてほほ笑む。
……ん?待て待て、おじさんのほうはわかるけど私にもおばちゃんは「男の子」っていわなかった?

それに…私は女の子のはずなのに……赤ん坊って……え?
どいうことーーー!?

女性は一度に二人の出産で疲れたのか弱弱しく赤ん坊を見て抱きあげた。

「はぁ……はぁ、生まれた……私と「あの人」の子。

生まれてきてくれて……ありがとう

今日からあなたたちは「蒼真」と「きり丸」よ……あなたたちは「双子」の兄弟なの仲良く支えあって生きてね?」



これが私の二度目の人生の始まりだった……

双子誕生の段

(蒼真……前世と同じ名前だ)
(元気な双子の兄弟が誕生したわね)
(あぁ、これで村も発展していくだろう!若い子供が増えるんだからな)

2019/09/12