人間という生き物の住処の段

この学園に狼こどもが迷い込んでから早くも数日が過ぎようとしてた。

野性的であるために回復力は高い方だが、栄養が暫く言っていなかったために今回は少しばかり回復が遅い様子だった。

それもそのはず、家族を山賊に殺されてからというもの剣や火縄銃で撃たれた腹部の傷が一番重症でありながらも身を挺して山賊と戦っていたのだから‥‥

忍たま長屋の一年生の部屋の隅にある部屋で一人ぽつんと廊下に座り込み足をブランと垂れ流し上下に動かしながら日向ぼっこをしている一人の少年がいた。

彼がおおかみこどもの「夜神 ユキナ」である
歳は10歳だが、身体能力は先生や上級生以上の身体能力を持っている。ちなみに忘れている方もいるようなのでもう一度いうが彼は「転生者」なのだしかも「18歳」の「高校生」
しかし野生本能の生活を長年と言っても7年やってきてしまっために本格的に人間の大人の思考が徐々に薄れてきてしまっているのもまた事実。

「‥‥‥‥」

少年はただ、何をするのでもなくただぼーっと空を見ながら日向ぼっこをしていた。

あまり動き回ってはいけないと絶対安静だからと念を押されているために下手に動けないのだ
ちなみに、念を押したのは保険委員長の「善法寺 伊作」である。

同じ一年生で保険委員である乱太郎は彼の監視役となった。
少年は思っていた。

何故こんな「両親を殺した人間どもの言うことを聞かねばならないんだ」

何故こんな「人間の教えを乞う必要があるのか‥‥」
人間になんか教わりたくない

そいう想いが段々と強くなってきてしまっているのだ。
その理由は勿論目の前で山賊に両親が殺されてしまった瞬間を見てしまったからだ。

僕はまだ、尻尾と耳をうまく仕舞えるようにはなっていない。父上は人間に化けてお金を工面して食料をたまに買ってくることもある。

好奇心旺盛だった僕はその時にどうやったら人間みたいになれるの?と聞いたことがあった

父上は僕の頭を笑いながらやさしく撫でながら言った

「修行を積み常に冷静さを失わずにいれば子供のお前でも出来るようになる‥‥だが、そこまで来るのには厳しい修行が必要になるんだ」

と父上が言っていた。
まだ訓練する前にあの事件が起きてしまったために何も教わっていない。唯一の支えでもあった人間だが生みの親でもある「母上」もいない。

人間のなかでは唯一好きな相手だった。

僕は人間の世界に一人取り残されてしまったのだ。

「‥‥はは、ぅぇ‥‥ちち、ぅぇ」

淋しい時辛い時はこの笛を吹きなさいと渡してくれた一つの小さな笛それは現代で言う「オカリナ」にもよく似ていた。

「私たちがいる時は駆けつけて側にいてあげられるけれど、万が一の時はそれを私たちだと思って大切にしてあげてね?」

母上がいつしか僕の誕生日の日に渡してくれたものだ。
そして一つの曲を教えてくださったのだ。

これは「海の笛」ともいって海の神と山の神にも捧げる笛の音色が出るんだとか‥‥

どうして母上が持っていたのかと言うと母上は神社の巫女様という職業についていたらしいが、父上と出会い駆け落ちというものをしたそうだ‥‥。

よくわからないけど夜神家に伝わる大事なものだから命より大事なものだから守らないといけない。

ぎゅっとその笛を数分抱きしめた後「海の笛」をそっと奏で始めた。

そっと心に響き渡るその優しい音色はこの学園全体にも届いていた。

誰もが手を止めて、その笛の音に耳を澄ませる。

「〜♪〜*」

側にいたものがその様子をじっと見つめていた。
監視している一年生である。

音色が吹き終わるとパチパチと長屋から小さな拍手が聞こえてきた。どうやら思いに耽っていて彼がいることを珍しく忘れていたようだ。

慌てて警戒を強める。
そんなことも気にせずにらんたろうは彼の隣に座った。

乱太郎「綺麗な音色だったね!何て曲なの?

聞いたことなかったけど!!」

「‥‥」

少し距離を開けて警戒するように目を細めて相手をじっと見つめる。

乱太郎「‥‥あはは、私は何もしないよ?

人間にも悪い人ばかりじゃないよ?特にここにいる人たちはみんな優しい人ばかりなんだ!!」

と両腕を上にいっぱい広げながら笑顔で答えた。

少年は、笛をしまい部屋に戻った。

困ったような悲しいような表情をしながら部屋の戸を閉める後ろ姿を見つめた乱太郎は‥‥‥

乱太郎「‥‥どうすれば、わかってくれるんだろう?」

「仕方のないことだよ‥‥目の前で両親を殺されてしまったのだからね‥‥」

乱太郎「あ!伊作先輩!!実習終わったんですか?」
伊作「うん、学園に近づくにつれて笛の音が聞こえたから誰かな?って思いながら戻ったんだけど一年生長屋の方から聞こえたから見に来たんだけど‥‥彼が吹いていたんだね」

と微笑ましく部屋にいるであろう少年の気配に微笑みを向ける
乱太郎「はい!とてもきれいな笛と音色でしたよ!

でも‥‥やはり私たち(人間)に警戒している様で‥‥治療はさせてくれるんですが薬を塗ろうとすると暴れてしまうこともあるので‥‥苦笑)」

伊作「‥‥まぁ、大変だけど少しずつ時間をかけて彼の人間への誤解を解いていくしかないよ‥‥

監視ありがとうね乱太郎、動き回ったりしていなかった?」

乱太郎「はい!以外とじっと空を眺めて今した」

伊作「よかった、それが心配で今日は早く終わらせることができたからね!着替えたら交代するから」


乱太郎「わかりました」

これが最近の日常である。
保健委員が交代で見張りながら彼の治療に専念しているのである。