瓜二つの君の段 伊作side

6年生たちが蒼真の四肢を拘束した時や五年生たちがそれぞれの武器で蒼真を攻撃していった時でさえ、抵抗はしなかった。

ただ、無言で歯を食いしばりながら痛みに耐えている姿を時々夢に蘇る


兵助と八左衛門が、前後に立ち最期の一太刀を振り上げた!

ドサッと彼が力なく倒れていくのがスローモーションのように見えた

これで、よかったのか?

本当に僕たちは、友人をこの手にかけてしまったのだ。

天女様はいつのまにか、姿を消してしまっていた。

いつ、僕らが忍術学園に戻ったのかも覚えていない。ただ、気がつくと校庭にいて乱太郎達が何かを抱きしめて泣き叫んでいた


乱太郎「・・・ぅぅ、蒼真先輩!

起きてください涙)」

きり丸・シンベヱ「蒼真先輩ぃぃ!」

はっと、我に帰った僕たちはなんで忍術学園の校庭にいるのかもわからないで辺りを見渡しながら混乱していた

ほかの六年生や五年生、四年生達も同じだった

仙蔵「な、なにがあったんだ!一体!」
文次郎「な、嘘・・だろう?!蒼真!?」
留三郎「蒼真っ、・・・俺たちが、やったのか?」

伊作「...蒼真」

兵助「っ、そ、そんな!嘘だ!」

久々知が震える声で悲痛な叫びをあげていた。それもそのはず、憧れ尊敬していた先輩をこの手にかけてしまったのだから

八左衛門「・・蒼真、先輩」

三郎「蒼真先輩っ」

乱太郎は冷たくなっている蒼真の体を強く抱きしめながら泣いていた
下級生達もいつのまにか集まっていて涙を流していた。

先生達も目を瞑りなにもできなかった悔しさから涙をこらえていた


蒼真が亡くなった次の日に学園内で静かに葬儀が行われていた。
蒼真は、戦争孤児で家族や住んでいた村を失った山田先生に助けられて義理の家族になったとまえにきいたことがあった。

家族は山田家の方なので、利吉さんも葬儀に賛同した。利吉さんが僕らを見る目は、複雑な表情だった。

それもそのはず、利吉さんは僕らに弟を奪われたのだから、恨まれても仕方のないことかもしれない!

母である山田先生の奥さんも山から降りてきて葬儀に賛同した静かに涙を流していたのを僕らは罪悪感から、俯くことしかできなかった。

ごめんなさい、ごめんなさい!
僕らは、長年一緒に頑張ってきた親友のことを信じずに数日前にやってきた天女様を信じてしまった。

いくら、妖術に負けて操られていたとはいえ、それは言い訳にはならない。

葬儀が終わりその日は、1日休みとなった!学園内は沈んでいた。

蒼真は、人気のある忍たまだったから当然だけど。


学園は次第に元通りになったが、下級生と僕たち上級生の間に、絆の亀裂が走り深い溝ができてしまった。

委員会でも下級生は、あまり来なくなってしまったのが悲しい現状で乱太郎達もこんな気持ちだったのかと、深く反省せざるを得ないのが、今の現状だ。


そんなある日のこと、委員会活動を遅くに終えて忍たま長屋に向かっていると、今ではあるはずのない気配がある部屋の中に一つ感じた。

こんな時間に誰かがいるなんてことはない。ましてや、部屋の主はもう二度と戻ってこないのだから

警戒心を強め気配を消しながらそっと、部屋の中を覗き見ると意外な人物が布団の中で眠っていた。


その光景はとても懐かしく、ただ目を見開いて驚いた!

そっと、布団に近づくとその人物は僕たちが手にかけたはずの疾風蒼真その人だったからだ!

敵の変装か?!もしや、三郎の悪戯?
いや、いくら鉢屋でも自分の心の傷をえぐるような悪戯はしないだろう。

変装かどうかを調べるが、本物のようだ
この世にいないはずの彼がここにいる


これは、幻術の類?!

色々混乱していると彼が魘され始めた

「ぃ、・・たぃ

‥‥伊作‥‥文次、‥‥留‥‥仙蔵、‥‥こへ、長次」

ぼそりと呟いた言葉と共に頬に流れる涙がとても熱く感じた

泣いてる、かつて蒼真が呼んでいた僕らの呼び方

「い、‥‥いゃ‥‥や、やめて!」

腕を伸ばしながら拒絶している!

起こさないと!


僕は恐る恐る蒼真の手を握った
懐かしいこの感触に生きてると感動を覚えた

伊作「そっ、うま!」