もしも償えるのなら‥‥の段

伊作side

僕は善法寺伊作忍術学園の六年は組の保健委員の委員長をしている。

ある日、この忍術学園に天女と呼ばれる異世界から来た女の人が降ってきた。

僕たちが校外演習での帰り道に拾い忍術学園で保護という形で居座ることになった

その時の記憶はあいまいだった

彼女と出会ってからの僕たちは授業や委員会活動をおろそかにし天女様といるためにただ彼女の周りを囲っているだけの存在となった

他のみんなも天女様に振り向いてもらおうと一生懸命高価なものを買ったりとしていた。

側にいるだけで幸せ‥‥その時は何故かそう感じていた

僕たちはその時点でもう道を間違えていたのかもしれない

下級生たちが委員会活動が回らないと調合ができないと泣きついてきたときがあったのだけど‥‥

僕はそれよりも天女様と一緒にそばにいたいという思いが強くて下級生たちに「僕がいなくても大丈夫だよ、来年からは皆がやることになるんだから練習だと思ってやってごらん?」と無茶ぶりを言ってしまったようだ‥‥。

そんな状態が2~3週間続き、ふと僕は六年生で一人足りないことに気が付いた‥‥

その人物は僕たちの同室「疾風 蒼真」だった‥‥
一度も見かけたことが無いように思えた僕は蒼真に天女様のところへ一緒にいこうと誘ったが悲しげな表情で断られた。

委員会活動はいいのか?とか授業は出ないのか?とか‥‥

色々言われたが‥‥僕は天女様の隣を選んだ

ある日のこと、蒼真が倒れたということを風のうわさで耳にした‥‥。

心配だったけど蒼真なら大丈夫だよね?

そう思い見舞いにはいかず治療にはいかず僕たちはずっと天女様のところにいた。

その日の放課後天女様が悲しげな表情でこちらに戻ってきたのでどうしたのかと聞くと蒼真に襲われたと震える声で怯えながら出来事を口にした‥‥。

信じられない‥‥

蒼真が女性を襲うなんて‥‥

その言葉を聞いた文次郎たちが怒りをあらわにしながら許せないと敵意を蒼真に向け始めた。

それは仙蔵や長次、小平太、留三郎も同じだった‥‥

四年生や五年生たちもそれは同じだった

久しぶりの演習授業に参加した僕たちは蒼真を集中的に狙うように攻撃を始めた‥‥。

蒼真は僕たちの中では一番強い‥‥

だからそんなに攻撃を当てることができなかった。
こんなにも差があるのだと実感した。

その日から文次郎たちは集中的に隙あらば蒼真に攻撃を仕掛けるようになった。

ある日のこと文次郎たちが策戦を立てた。

裏裏山におびき出して蒼真を殺そうと‥‥

僕はその言葉にびっくりした

いくら女性を襲ったとしても殺すのはやりすぎではないのかと‥‥

同じ六年間を過ごした友人を何の躊躇もなく殺そうと言い出したのだ‥‥。

そして、僕たちは彼を呼び出した。

彼は何も躊躇することなく裏裏山にやってきた、なんの武器も持たないまま

彼は、無表情のままただ静かに佇んでいた

「・・・来たぞ」

「ほぉー逃げもせずによく来たな"疾風"」

木の枝から様子を見ていた仙蔵が感心したようにしながら静かに降り立った

前までは蒼真と呼んでいた彼はいつのまにか、苗字で呼んでいた。


「他の奴らもいるんだろう?隠れてないで出てこい!」

「いやぁー、流石は"元"六年生の凄腕忍者ですね、俺らも上手く気配を消したつもりだったんですがねー」


元を強調しながら頭をかき木の裏から出てきたのは、尾浜勘右衛門だった。

無表情で尚且つ無言で睨見ながら出てきたのは同じ火薬委員の後輩である久々知兵助もいた。

兵助「・・・睨)」

「・・・兵助」

悲しげな声で小さくボヤいたのは蒼真だった。

久々知は、一年の頃から蒼真を尊敬慕っていただが、今では敵を睨みつけるよな殺気むき出しをしていたのには驚いた!


「・・・、相談したい雰囲気じゃぁ、なさそうだな」

八左衛門「・・・っ。」

竹谷八左衛門もまた、火薬委員会と生物委員会を掛け持つ蒼真の後輩の一人であった
蒼真のことを睨みつけながら、絶望したような表情で見ていた

裏切られていたような、恨めがましい眼差しで。


「・・・っ、八」

三郎「こんにちわ、"疾風"さん」

兵助と、八左衛門を庇うように前に出てきたのは貼り付けた笑顔でやってくる鉢屋三郎だった。

三郎もまた彼の変装を見破られる唯一の一人として尊敬し、慕っていたのだが苗字で呼んでいたもはや先輩もつけていない。

「・・・三郎」

三郎「気安く名前で呼ばないでください」


「・・・っ!」


雷蔵「蒼真先輩一つお聞かせ願いたいことがあります!」

「・・なんだ」

三郎「雷蔵、こんな奴に先輩なんかつけるな!」

雷蔵「でも、三郎」

三郎「こいつは、天女様を傷つけたばかりでなく私たちをも裏切った裏切り者だぞ!」


「・・・」

雷蔵「天女様を襲ったのは本当ですか?!本当でしたら、何故そのようなことをしたのです?」

蒼真は、弁解もしなかった、只管無言のままだった。


この時に少しでも違うと言ってくれたら、僕たちはこんな過ちを犯さなくて済んだのかもしれない


三郎「、なんとか言ったらどうだ?!」

「もし、僕が違うと言ったところでお前たちはそれを信じるのか?」

その顔は何もかもを諦めたような表情で、瞳には光がなかった。

雷蔵「それは、・・」


雷蔵は、何かを言いかけて俯いた

文次郎「・・・こいつに何を話しても無駄だろう、天女様に手を出した不届き者だからな!」


留三郎「文次郎のいうとおりだ!

話すだけ時間の無駄だ!」

二人の意見が合うのは珍しい後に豪雨になる前に早く片付けようと仙蔵も前に出てきた


仙蔵「・・さて、疾風何か弁解はあるか?」

「・・、弁解も何も僕は彼女に対し面識もなければ手をあげてもいない」

天女「ぅ、嘘よ!私は・・ただ、彼が熱を出して倒れたと聞いてお見舞いに行っただけなのに、殺そうとしたのよ!」

天女様は四年生に背中をさすられながら震える声で涙目にながら悲痛な叫びで訴える。

「あなたを襲ったのを誰も目撃していないし、僕にはそんな気力もないそれに、あなたを襲う理由もない

こちらに飛び火を飛ばすのはやめていただきたいのだがな」


雷蔵「もぅ、何をいっても変わらないのですね」

兵助「俺は、あなたを尊敬していましたが、あなたは変わられてしまいました」

八左衛門「俺もです。あなたを尊敬していました。ですが、尊敬していたからこそ裏切り感は、果てしないです!

先輩の過ちは」

兵助「俺たちが正します」

八左衛門「疾風蒼真、罪を償うために、死んで下さい」


「...、それがお前たちの答えか...


本当に変わったのはお前たちの方だよ」

その言葉はそばにいた僕だけしか聞こえなかった。当時はその時の意味がわからなかった。でも、今ならわかる。

聞こえた僕がこの時に止めに入らなければいけなかったのも。

僕は今でも後悔している


仙蔵がやれっ!と合図をすると6年生たちが動き出す

長次と留三郎、小平太と文次郎が縄*で蒼真を四肢を拘束した

蒼真は、一切抵抗しなかった。